欧州の水業界と農業部門が相反する意見、再生水の活用を促すEU施策めぐり

欧州の水業界は、拘束力のあるEU法で再生水(reused water)に関する基準を定めるよう主張しているが、農業部門は、より柔軟な対応を求めている。欧州委員会は循環型経済への移行の一環として、再生水の利用促進に取り組んでいる。中でも水不足解消に最も効果が期待でき、EUレベルで取り組む意味があると判断した用途(灌漑と帯水層への再充填)に使う再生水については、最低限の要件を定める法案を出すことを視野に、様々な政策オプションについて市民や利害関係者などの考えを聴くため、2016年10月28日~2017年1月27日に意見公募を実施した(詳細は下記URL)。
http://ec.europa.eu/environment/consultations/reused_water_en.htm

この意見公募で、水関連事業者団体EurEauは、灌漑と帯水層への再充填に使用する再生水についてEUレベルで最低限の水質基準を定めるための手段としてEU指令が最善であるとの考えを示した。これはEU全域で最低限の水質を保証しつつ、各加盟国が地元の状況に基準を適応させられるからだという。対照的に、農業団体Copa-Cogecaは、地域特有のニーズに対応する柔軟性を各加盟国に持たせるためには、拘束力のある規制よりも、もっと目的に適った他の手段を検討すべきとした。

なお、両団体とも、汚染要因としての微生物や養分に関する基準作りが必要との点では一致している。Copa-Cogecaは、他のEU法で未対応の化学物質についても基準を作るべきとしている。またEurEauは、これから新たに登場する汚染物質も将来的に対象に含めることを検討する必要性に言及した。

また両者は、再生水の利用拡大を阻む主因として、高額な処理費用を特に挙げている点でも一致している。Copa-Cogecaは、再生水に含まれる養分の量を特定するには多額の費用がかかるため、農家は養分を全く含まないものしか受け入れられないとし、こうした品質の再生水を作り出す費用が引き続き主な障害となると指摘した。その上、そこに新たな汚染物質や、抗生物質、化学物質などの問題も加わってくるとの見通しも示した。このほかCopa-Cogecaは、再生水を使った結果、何らかの汚染が生じた場合に、誰が責任を負うのかを明確にする必要性についても言及した。

再生水の利用促進に関する欧州委員会の行動計画と進捗が下記URLで閲覧可能。
http://ec.europa.eu/environment/water/reuse-actions.htm

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