ベトナム・ハノイ市、2020年までに水道普及率100%を目標に

ベトナム・ハノイ市で、2017年6月13日、同市の水道システムの現状および2020年までの開発対策に関する当局、企業らが集まる会合が開かれた。ハノイ市建設局の報告によると、現在ハノイの農村地域では、17郡416村・町およびソンタイ町に居住する433万1000人超のうち、その約4割にあたる161万1000人が農村水道の使用対象となっている。農村水道施設は主に市予算を用いて建設投資されている。農村地域の水道状況を解決すべくハノイ市人民委員会は、農村地域における給水投資の社会化を呼びかけ、農業農村開発局に実行を委託。これまでに市は、75村、18万世帯以上、約73万人を給水範囲とする、20件の農村給水プロジェクトを実施する10の投資家の方針を承認しており、これらのプロジェクトが完了すれば、農村住民の約54%に水道が供給される。2016年6月以降だけで、幾つかの農村給水プロジェクトの投資が行われ、約1万5000世帯、およそ6万人に水道が供給された。

企業12社および9郡幹部の発表を聞いたハノイ市のグエン・ドゥック・チュン人民委員長は市の目標として、2020年までに100%の市民に水道が供給され、その水質基準は中心部、郊外という考え方をなくし、“蛇口をひねれば飲める”ほどの水質に達さなければならないとし、「これは生活の質を高める実用的な対策のひとつだ」と強調した。この目標の達成に向けて委員長は、浄水場は表流水の利用に完全に切り替えなければならないと要求した。そのため中心部に給水している浄水場は、早急にろ過技術の研究を行い、2018年に展開できるよう20178月中に計画案を提出しなければならない。また委員長は、21%にも達する現在の漏水率を受け入れることはできず、7%超に下げる必要があり、これができれば10万m3の水道水が加わるとし、「このような状況を続けてはならない。市は水道管理幹部に対して“革命”を起こさなければならない」と述べた。これとともに委員長は給水各社に対し、給水網を見直し漏水を起こさないことや、定期的な給水網洗浄が行える技術変更・調整、漏水や汚職を発生させない組織強化計画、管理方法の構築を求めた。

いっぽうで農村地域について委員長は、既存の浄水場から取水する給水網の開発を続けるとともに、新しい浄水場の建設を投資家に促した。「市は企業、投資家が農村給水を行うことを奨励する。各社が銀行とつながる手助けをし、資金援助のため8000億~1兆ドンの低金利・無金利融資を行い、ミードゥック、メーリン、チュオンミー、トゥオンティン、フースエンといった郡や村でプロジェクトを開発する企業を優先する」と委員長は述べ、市は行政改革を推進し、この分野に投資する企業に最良の利便性を整え、今後は従来の計画投資局に代わり、建設局に投資プロジェクトの書類受け付け窓口を任せ、設計しながら施工を行う制度を認めることを明らかにした。

委員長は、これまで効果的な展開を行ってきた企業を歓迎し、拡大を続ける必要があるとし、建設局に対し、ハナム水道社のプロジェクト書類を受け付け、同社が速やかに郡民に給水を行えるよう、フースエン郡、財務局と連携することを指示した。また第2水道社については、基準にそぐわない資材を利用した責任を確認し、ナムソン村の住民に給水を行うため早急にソクソン郡と連携する必要性を指摘。新しい浄水場の建設を進めるほか、すでに操業している浄水場は、能力向上や給水網の拡大を研究し、連携して地域を網羅すること、給水各社は管理能力を高めるためにスマート水道メーターの早期導入を検討することを指示した。

EnviXコメント

上でも述べられているが、ハノイで水道普及率100%を達成するためには現在の地下水への依存から脱却し、水源を表流水へ切り替える必要がある。2013年に公布された「2050年を視野に入れた2030年までのハノイ浄水供給マスタープランに関する首相決定499/QD-TTg」によると、2012年時点およびその後の目標値としての表流水および地下水それぞれの処理プラントの容量は次の通りである。2012年では地下水処理が大きく上回っているが、その後は逆転し、表流水処理プラントの容量が拡大を続ける見通しである。いっぽうで地下水については少しずつ減少する予定である。

 

2012

2020

2030

2050

表流水処理プラント

230,000

1,140,000

2,125,000

2,750,000

地下水処理プラント

628,421

623,500

613,000

578,000


図表 ハノイにおける浄水プラントの処理能力の目標(2012年は実測値)
(出典:決定499/QD-TTgをもとにエンヴィックス作成)

水道水源が地下水から表流水へと替わることで、同レベルまたはそれ以上の“蛇口をひねれば飲める”水質を達成するために、さらに高い水処理技術が求められることになるだろう。表流水の水質は、天候や季節による変動が大きい。時々刻々と変化する原水の状況に応じた水処理剤添加量の管理、原水および処理水のモニタリング、濾過槽のメンテナンスなど、浄水場を適切に維持管理するための人材育成、マネジメント力の底上げが重要だ。これに加えてIT技術を利用した漏水管理・モニタリングを進めることで、中長期的な水質の改善および効率的な水量管理が図れるものと期待される。

タグ「」の記事:

2020年7月9日
米カリフォルニア州政府、飲料水中のマイクロプラスチックの定義を発表
2020年7月9日
米EPA、飲料水中の過塩素酸塩を規制しない方針を最終決定
2020年5月9日
米カリフォルニア州政府、飲料水中の六価クロムの新汚染基準策定に向けたワークショップを開催
2020年3月24日
米EPA、飲料水中のPFOAとPFOSの規制を予備決定
2020年2月23日
米州水規制規制機関協会ADERASA、上下水法規に関する第12回イベロアメリカ・フォーラム開催