WWF UK、イングランド及びウェールズにおける河川の水質汚染状況の調査結果を発表―-40%の河川が下水によって汚染されている

自然保護団体WWF UK(World Wide Fund For Nature United Kingdom)は2017年10月16日、英国内のイングランド及びウェールズにおける河川の水質汚染状況を調査した報告書“Flushed Away[1]”を発表した。その結果、これらの地域において水質基準に達していない河川の55%が下水で汚染されているという驚くべき事実が判明した。下水で汚染されている河川は同地域全体の40に達する。なお、下水を原因とした汚染事故の頻度(2000年~2015年)の分布は下図の通りである。


図 下水を原因とした汚染事故発生の頻度分布(2000年~2015年)
(出典:Flushed Away)

イングランド及びウェールズでは、老朽化した下水処理システムからの、河川への断続的な汚水放出が深刻な問題となっている。河川への汚水放出は合法であるものの、汚水処理レベルが河川の水質維持に十分でない状況にある。今回の調査対象地域における、ある水道会社から提供されたデータによると、その会社での下水処理の現状として約三分の一が未処理のまま放出されていることが判明した(下図)。


図 調査対象地域におけるある水道会社の2016年度の下水処理状況
(出典:Flushed Away)

そのほか、雨天時の越流水も大きな問題のひとつである。越流水を未処理のまま河川へ流す放水管は1万8000カ所以上存在し、このうちの約90%の地点で雨水と混合された未処理汚水が河川へ直接放出されている。下水道管の容量を超える雨水が流入し、家庭への下水の逆流を防ぐために、大雨時に越流水を未処理のまま河川へ放出する仕組みとなっている。WWF UKの調査によると、これらの放水管のうち、少なくとも週1回の頻度で越流水が河川へ放出されている割合は全体の8~14%に達し、月1回の頻度では全体の3分の1から2分の1へと引き上がる。河川への汚水放出により藻類が急激に繁殖し、生物の存続に必要となる河川中の酸素が欠如するため、カワウソやカワセミなどの水中の獲物を捕食する動物に影響を及ぼす。河川の水質汚染を防止する法規制の整備が不十分であるほか、ウェットティッシュ、料理油、生理用品など、排水溝や下水管に流すべきでない異物を住民が流している。これらは下水管が詰まる原因となり、越流の頻度が増加する。

このような問題解決に向けた取り組みが過去5年間以上にわたり実施されてきた。イングランドでは現在、越流水全体の約3分の1が監視されており、環境庁(Environmental Agency)は2020年までに越流水を監視する割合を増やすことを計画している。また、下水業界では、「21st Century Drainage Programme」と呼ばれるイニシアティブが立ち上げられ、下水道の容量を検証するとともに、下水処理需要に対処した整備計画を策定している。WWF UKは、これらの取り組みに一定の評価を示すものの、更なる改善を求めるのであればより迅速でさらに踏み込んだ対応が必要であると指摘している。

なお、2014年には処罰のためのガイドラインが改正され、違反によって引き起こされた汚染の深刻度が罰金額に反映されることとなり、大幅に増加した(下図)。


図 上下水道会社に課された罰金総額の推移
(出典:Flushed Away)

[1] https://www.wwf.org.uk/sites/default/files/2017-10/Flushed%20Away_12Oct17.pdf

タグ「」の記事:

2020年2月23日
米州水規制規制機関協会ADERASA、上下水法規に関する第12回イベロアメリカ・フォーラム開催
2020年2月1日
ブラジル・リオデジャネイロの上下水会社CEDAEの飲料水の水質問題で、民営化プロセスが困難になる可能性あり
2020年2月1日
ラ米ではPPPによる上下水部門への民間の参加が必要だが、法整備などの面で課題あり
2020年1月15日
RCAP、農村地域を対象とした医薬品の摂取過剰の解決と水質改善を目的としたパイロットプログラムを実施
2020年1月9日
下水に含有する薬剤の効果的な除去方法の特定――活性炭とオゾン処理を導入