アブダビ、2020年までに全排水を回収、再利用へ

アブダビ政府は2017年11月6日、国内で排出される排水を、2020年までに全て回収、再利用する目標を明らかにした。同国における現在の水供給源は、地下水と海水淡水化が大部分を占めており、排水処理水の再利用は僅か5%程度に留まる。2020年までに排水処理水を全て再利用することで、地下水と海水淡水化の比重を低下させる。

アブダビ環境庁(EAD:Environment Agency-Abu Dhabi)が発行した「環境報告書2017年(Environment Report 2017[1])」によると、アブダビの水供給源は現在、地下水が60%、海水淡水化が35%、残り5%が排水処理水の再利用である。EAD水源アドバイザーMohammad Dawould博士は、農業灌漑用水の60%が現在地下水の汲み上げに依存しているため、国内における全ての排水を再生、再利用し、農業用途に活用することを目的としているという。なお現在のところ、農業分野では地下水に大きく依存し、その他のセクターでは脱塩水の利用がほとんどである(下図)。

 
図 2012年のアブダビにおける各セクターの水需要量とその供給源(単位:million m3
(出典:Maximizing Recycled Water Use in the Emirate of Abu Dhabi 2013[2]

過去10年間においてアブダビの地下水位は低下傾向にあり、特に東部地域ではそれが深刻化している。アブダビの貴重な地下水源は持続不可能なペースで縮小しており、地下水源の持続可能性は同国が直面する大きな課題の一つである。アブダビには国内に合計11万5000以上の井戸が存在し、そのうちの80%が使用されている。しかし、残りの20%が枯渇しているため、同国では最新技術を活用し、枯渇した井戸の再生が行われている。


図 アブダビの地下水位の変化(2005年から2016年にかけての変化)
(濃い赤ほど低下していることを示す)
(出典:Environment Report 2017)

EADは、地下水及び海水淡水化の代替として、排水処理水の再利用を拡大することを目標として掲げている。現在のところは排水処理量の50~60%が再利用されているに過ぎず(下図参照。縦軸の目盛は100~350であることに注意)、今後はこの割合が拡大していくものと見込まれる。


図 アブダビでの排水処理量、再生処理量、および再生処理率の推移(単位:Million m3
(出典:Environment Report 2017)

[1] https://www.ead.ae/Publications/Abu%20Dhabi%20State%20of%20Environment%20Report%202017/EAD-full-report.pdf

[2] https://www.ead.ae/Publications/Maximizing%20Recycled%20Water%20Use%20in%20the%20Emirate%20of%20Abu%20Dhabi/recycled-water-PB-Eng.pdf

タグ「, 」の記事:

2020年3月24日
米EPA、水資源の持続可能性確保などを目的とした水再利用の国家行動計画を発表
2019年12月23日
El Paso Water、下水処理水の飲用再利用を目的とした施設の設計完了に向けて補助金を獲得
2019年12月22日
スペインの灌漑協会、世界の食糧問題には、再生水を利用した灌漑を推進すべきとの見解
2019年12月20日
チリの銅開発公社Codelco、丸紅のコンソーシアムが落札していた淡水化プラント建設の入札をキャンセル
2019年12月3日
欧州委員会、農業への水再利用の最低要件に関する暫定合意を歓迎