IWA、廃水再利用の潜在機会を分析

英国ロンドンに拠点を構える水分野の非営利業界団体「国際水協会(IWA:International Water Association)」は2018年2月26日、廃水の再利用の価値や利用機会を分析した報告書“Wastewater Report 2018: The Reuse Opportunity[1]”を発行した。同報告書では、未処理の廃水には多様な資源が含まれており、これを回収、再利用することで、都市の持続可能な発展を促す機会となると結論付けた。

現在約80%の廃水が、河川、湖沼、海洋等へ未処理のまま放出されるなど、廃水処理は世界的な問題となっている。未処理の廃水は、人体の健康や環境へ悪影響をもたらすほか、窒素やメタンなどの温室効果ガス排出量を大幅に増加させる要因となる。未処理の廃水に含まれているこれらの大気汚染物質は、従来の廃水処理施設で処理された場合と比べて3倍に上るとされている。発展途上国の多くの都市では廃水処理が十分でないことから、未処理の廃水から大量の大気汚染物質が排出されており、これらは世界全体における都市の温室効果ガス排出量の大きな割合を占めている。

産業施設や一般家庭から排出される廃水には、有機物、リン酸、窒素、セルロース、レアアースなどの資源が含有されている。最近の技術革新に伴い、廃水からの資源回収が経済的に実現可能になりつつある。廃水から回収された資源は、バイオガス、肥料、紙、金属、プラスティックの製造などに再利用されているものの、最も重要とされる未使用の資源は新たな水源となる「水」そのものである。これらの廃水中に含まれた資源や水、エネルギーなどを再利用することで、循環経済への移行が促進されるほか、水セキュリティを向上することができるなど、都市の持続可能な発展の機会をもたらす。特に、世界人口が2030年に85億人に達することが予想され、都市の持続可能な開発を達成するために、廃水の回収、安全利用のニーズが高まりつつある。

国連は2015年に、世界の社会的・経済的な発展に向けて、持続可能な発展に向けた目標(SDG:Sustainable Development Goal)を達成する領域として、貧困、飢餓、健康、教育、気候変動、エネルギー、環境、水、衛生などの17分野を掲げている。水分野もそのうちの一つとして掲げられており、廃水問題も急務な課題として位置付けられている。そのため、IWAが今回発行した報告書では、廃水問題を抱える世界8都市(下図)を事例として抽出し、廃水の回収、再利用の潜在機会を分析するとともに、廃水の再利用を促すことで、SDGを達成する優先事項を特定している。最近の科学的・技術的革新を増進させ、循環社会への移行を進めることは、水分野のSDGを迅速に達成することにつながる。

[1] https://www.viawater.nl/files/wastewater_report_2018.pdf

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