アジア開発銀行、フィリピンの遠隔地域での飲用水確保のための新技術開発を支援

2018年6月21日、アジア開発銀行(ADB)はフィリピンの都市部および遠隔部における飲用水の確保を進めるべく、太陽光を利用する新技術の導入を支援すると発表した。具体的には、米国に拠点を置くZero Mass Water社(本社:アリゾナ州、以下「ZMW」)[1]とフィリピン国家電化庁(NEA:National Electrification Administration)と連携し、今後数カ月で国内島嶼部に太陽光と空気を利用する飲用水製造システムを導入し、その効果を検証するパイロットプロジェクトを実施するという。

太陽光を利用して空気中の水蒸気を抽出

ZMW独自のSOURCE Hydropanel技術は、太陽光により駆動するスタンドアローンの飲用水製造システムであり、太陽光パネルと水製造部、貯水タンクで構成される。システム表面は太陽光パネルに覆われており、この太陽光パネルで発電した電気を利用して空気を吸引し、独自の吸収剤により空気中の水蒸気を抽出する。抽出された水は、貯水タンクに貯められ、健康と味の観点からカルシウムとマグネシウムを添加される。1つのシステムには30リットルの水を蓄えることができ、使用期間全体では2.5万リットルの水を生成することができるという。本技術の導入によりペットボトルの飲用水を購入する必要がなくなり、プラスチック廃棄物が削減されることもメリットとして挙げられている。ZMWによると、同システムは湿度の低い地域でも問題なく水を製造でき、実際アリゾナの本社でも年間を通じて水が製造されているという。


図 SOURCE Hydropanel(上段:本体、下段左:設置した様子、下段右:屋内での淡水の取得)
(出典:Zero Mass Water社のホームページ)

 

ADBは2017年から本部にHydropanelを導入、利用性を確認済み

2017年、ADBはマニラの本部にこのSOURCE Hydropanelシステムを導入し、プラスチック廃棄物の削減を図るとともにフィリピン国内への導入可能性について検証を行った。ADBからの支援の下、NEAはZMWと協力し、今後数カ月で国内8つの島に合計で40台のHydropanelを導入するという。ADBの部門責任者であるYongping Zhai氏は次のようにコメントした。「気候耐性の高いSOURCE Hydropanelによる飲用水の製造は、地方や水道が引かれていない地域における優れたソリューションとなるでしょう。とりわけ、現時点で信頼性の高い飲用水および電気へのアクセスが確保されていない島嶼部においてはより重要性が高い技術といえます。このパイロットプロジェクトを通じて、この革新的技術の持つ可能性を実証できればと思っています」

ZMWの創始者兼CEOのCody Friesen氏は次のように述べた。「ADBとNEAとの提携の下、フィリピンの飲用水に関する課題を解決する革新的ソリューションとしてSOURCE Hydropanelを設置できることに興奮を覚えています。離島が多いフィリピンは、従来の水インフラに頼ることが困難でした。しかし、家庭や地域、企業においてサステナブルな方式で飲用水を生産できる当社の製品は、こうした状況には理想的と言えます。」安全で高品質な飲用水を発展途上国の人々に届けることを目指すZMWは、太陽光パネルを中心とした再生可能エネルギーソリューションを販売するGreen Heat社を代理店として、フィリピン国内全土でHydropanelの設置を行っていくという。

[1] 2014年創業。「Perfecting water for every person, every place」をビジョンに掲げ、日光と空気を利用して飲用水を製造するSOURCE Hydropanelを製造・販売する。SOURCE Hydropanelの仕様は以下より閲覧可。
https://www.zeromasswater.com/wp-content/uploads/2017/10/Technical_1-Pager_v6.pdf