アラブ首長国連邦の首都が位置するアブダビ首長国のエネルギー省（DoE：Department of Energy）は2019年6月下旬、アブダビにおける再生水（排水処理水）の利用促進を掲げた「再生水政策（Recycled Water Policy）」を新たに策定したと発表した。同政策は、一般家庭、商工業、農業などの全てのセクタを対象とした将来の水需要を満たすために、再生水を新たな水資源として位置づけ、飲料水や地下水などを含めたアブダビのあらゆる水資源の保全に対する取り組みを支援することを狙いとしている。
今回発表された「再生水政策」は、アブダビ首長国エネルギー省が主催したワークショップにて明らかにされた。同ワークショップには、上下水道事業者などを含めた全てのステイクホルダーが参加した。エネルギー省によると、同政策は、排水処理水の再利用検討委員会（Treated Wastewater Reuse Committee）との協力に基づき策定され、水供給事業者（水道事業者）を通じて再生水の持続可能な供給を確実に行う役割を強化する。同政策に基づく再生水の利用は、アブダビ下水道サービス社（ADSSC：Abu Dhabi Sewerage Services）及びエネルギー省から許認可を受けた他の事業者が所有する排水処理施設の排水処理能力（総容量）に一致するように設計されている。エネルギー省やアブダビ下水道サービス社に加えて、アブダビ供給会社（Abu Dhabi Distribution Company）、Al Ain水供給会社（Al Ain Distribution Company）、独立系下水道排水処理施設が、同政策を実行する予定である。
新政策は、アブダビの再生水の調査や再生水供給などを含む全ての領域や事業活動に適用される。同政策にて規定されている主な内容は以下のとおりである。
- 排水処理水（再生水）の購入、輸送、供給、貯蔵を効率的且つ安全で経済的に実施する条件や要件等を遵守することを関連機関へ義務付け
- 全ての給水・配水地点において、公共の健康や環境、水質を保護する上で必要となる水保全・安全計画を策定、施行する
- 定期的な水質管理を実施する有効なメカニズムを設立するとともに、タイムリー且つ正確な情報を提供する効率的な報告体制を構築する
- 水供給事業者は、飲料水以外の目的で再生水を利用する全てのニーズ（要望）を把握する責務を負う。また、利用可能な水資源量と各ユーザーが必要とする実際の水利用量とを考慮し、再生水の用途ごとにそれぞれの水量や水質を決定する責務を水供給事業者は負う
「再生水政策」は、アブダビにおける水資源の保全と効率的な管理を確実に実施するために、エネルギー省による水管理戦略の策定を支援する。エネルギー省政務次官を務めるMohamed Bin Jarsh Al Falasi氏は、「『再生水政策』は、水が戦略的な資源であるというエネルギー省の認識を高めると同時に、水セキュリティは水の安全性を持続する上で必要不可欠であるという理解を深める。再生水を含むすべての水資源を管理する包括的な政策を策定することが急務である」と述べた。同氏は続けて、「我々が策定した『再生水政策』は、アラブ首長国連邦が策定した水セキュリティ戦略2036（UAE Water Security Strategy 2036）の目標に合致している。いかなる状況でも持続的に水へのアクセスを確実にするほか、一般家庭、商工業、政府、農業などの全てのセクタを対象とした水供給を十分に確保する。廃棄対象となる排水を最大限に活用するために、我々は最新の再生水技術を利用することを検討してきた。アブダビにおける海水淡水化や表面水への依存低減を支援する水資源の保全という観点から、再生水の利用は革命的な取り組みである」と付け加えた。
なお、近年のアブダビでの水の再利用に関するデータは以下の通りである。2015年時点で処理された排水の51.39%が再利用され、その量は約1億5000万m3となっている。
図 アブダビでの排水処理量と再生水量
（出典：ABU DHABI STATE OF ENVIRONMENT REPORT 2017[1]）
[1] https://www.soe.ae/wp-content/uploads/2017/11/Water_Resources_English.pdf
