フィリピン・マニラの水道会社、水質浄化法違反の疑いで多額の罰金の可能性も

2019年10月10日に現地で報じられたところによると、フィリピン・マニラ首都圏東部で上下水道事業を展開するマニラ・ウォーター社が、西部を管轄するマイニラッド・ウォーターサービス社とともに、水質浄化法違反を理由に多額の罰金を科される事態となっている。その理由は、下水道設備の整備(全ての住宅、集合住宅などを下水道に接続すること)を水質浄化法第8条に定める期日(施行から5年間の2009年)までに完了しなかったというものである。最高裁は、両者の監督機関であるマニラ首都圏上下水道サービス(Manila Metropolitan Waterworks and Sewerage Services: MWSS)もこの違反の責任を共同で負うとしている。マニラウォーターはこの判決について、根拠がないものだとして反論し、また消費者擁護団体もこれを批判する事態となっている。

最高裁は2019年8月、この水質浄化法違反を根拠に、両社それぞれに9億2100万ペソ(約19億6000万円)の罰金を科し、さらに下水道プロジェクトが完成するまでの1日ごとに32万2102ペソ(約68万円)を追加するとの判決を下した。最高裁は、水質浄化法の下で求められている業務は、家庭や集合住宅などの「既存の」水道管を、コンセッション企業の「利用可能な」下水道管に接続することだけだと述べた。実際の工事の状況はといえば、マニラウォーターの管轄内2009年までに6万3000人の水利用者のうち6万1000人が下水道に接続され、2000人は接続されていなかった。これは、利用可能な下水道の容量を超えることを理由としたものであった。しかしその後、マニラウォーターらは当初予算を数十億ペソ以上超える額を投じ、新たな下水道を敷設してきた。

一方で最高裁は2011年、下水道施設を受け入れる側である17の地方自治体が、下水道敷設工事を行うために必要な道路の条件を整える義務を果たしていないと批難し、MWSSおよび両社に対し、(自治体側の受入れ体制が整った上で)2037年までに法令を完全に順守するよう命じていた。さらにマニラ首都圏のすべての地方自治体に対し、下水処理場に対して土地と道路の権利を提供し、許可を発行し、法律に準拠していないすべての世帯と施設を特定するよう命じていた。消費者擁護団体シチズン・ウォッチ・フィリピンは、この2011年の最高裁判決は、2018年のマニラ・ウォーターへの判決と食い違い混乱を生じるものだと批判していた。マニラウォーターは、今回の最高裁の判決が覆らないのであれば、そのツケは利用者に回ることとなり、水道料金は780%(1m3あたり26.7ペソ=約57円)値上がりすると述べた。また短期間に下水道の工事を一気に進めるのであれば多くの道路を同時に掘り起こすこととなり、現在すでに発生している交通渋滞による巨額の損失はさらに膨れ上がるだろうと述べた。シチズン・ウォッチは、コンセッション企業を罰することは市民を罰することだと最高裁の判決を批判している。

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