第46号(2013年5月発行) – 老朽化する先進国の水インフラ

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EnviX「水ビジネス・ジャーナル」46号(2013年5月発行)の目次と主要トピックをお伝えします。

はじめに

このEWBJ46号でもこれまで同様に、世界の水ビジネスに関わる様々な業界の企業動向、各地域の政策と規制の動向、最新の研究開発動向をお伝えしています。その中で特に今回注目すべきトピックとして「老朽化する水インフラ」があります。先進国でのインフラの老朽化は深刻であり、特に水インフラは重要な課題となっております。例えば米国では、毎日大きなものだけでも650か所で水漏れが発生しており、毎年漏水で失われる処理水の量は2兆ガロン(約75万 m3)に及び、その価格は26億ドル(約2652億円)に相当すると見積もられています*1

米国ではこの問題に呼応するように、2013年5月に上院で2013年の水資源開発法案(S. 601)」が可決され、下院に送られました。この法案では、水インフラのための資金供給を行う公的機関の創設を定めており、これが水インフラの改修を進めていく上で重要な役割を果たすと見込まれています。
全米市長会議が2013年に公表した報告書*2では、国内の自治体による上下水道インフラへの投資額が公表されました(下図)。これによると、年平均6.5%で投資額が毎年増えていることが分かります。今後25年間では、上下水道セクターだけでもインフラ投資に1兆ドル(約100兆円)が必要になると予測されています。

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2001年~2010年までの米国における水インフラへの年間投資額の推移

この米国の水インフラに注目して、すでにそこでの事業展開の強化に乗り出した海外企業もあります。例えば今号で紹介しています、水道網管理などに用いられる製品を扱うイスラエルのWhitewater Groupがそうです。同社は、上下水道インフラのエンジニアリング会社と提携契約を結び、自社製品の提供を行っております。さらに、オハイオ州で新たな子会社も設立する予定です。

水ビジネスというと、地域的には中国、ASEAN、中東などの途上国が注目されがちです。確かにそれらの市場規模は今後拡大していくと期待されておりますが、先進国での水インフラに関わる市場も大きく成長していることに目を向けていき、ビジネス・チャンスを広げていくことが重要ではないでしょうか。

EnviXでは以前から先進国、特に米国の水インフラに注目してきました。今回EWBJ46号でもこれに関連するものとして以下のトピックを掲載しております。

  • 米国水環境連盟が国家水インフラサミットを開催
  • 米上院委員会を水インフラ資金・改革法案が通過
  • 米上院を水インフラ資金・改革法案が通過
  • 増大する米国水インフラ需要と進化する「設計‐建設方式」
  • NACWA、WERF、およびWEF、アメリカの下水道ユーティリティの未来を描く報告書を公表

是非ともご覧ください。

また、今回の特集ではタイのHydrotek社」へのインタビューを掲載しております。これは、2013年2月にEnviXスタッフがタイに行き、HydrotekのCEOへのインタビューをまとめたものです。Hydrotekはタイ国内で多くの水事業を手掛けており、最近ではミャンマーへの進出も計画しております。

その他、今回新たに中国の水市場に特化したコラムを掲載しました。これは、EnviXのパートナーでもある「清華大学環境学院 常妙 助教授」が作成したものです。常助教授は、中国の十二次五カ年計画のなかで水分野の政策策定に関わっている方で、水政策の専門家です。今回は中国の「排水」にスポットを当て、その最近の動向を紹介いたします。

*1 米国水インフラを中心とした世界のインフラ市場については、EWBJ44号で計21ページにわたり解説しております(「【特集】世界のインフラ市場の危機と今後の市場性」)。*2 The US Conference of Mayors, 2013: Growth in Local Government Spending on Public Water and Wastewater -But How Much Progress Can American Households Afford?
http://www.usmayors.org/pressreleases/uploads/2013/0502-report-water.pdf

巻頭トピック

  • Lockheed Martin、淡水化に使えるグラフェン膜の特許を取得
  • Ecolab、オランダAkzoNobelのPurate事業部門を買収へ
  • 米RWL Water Group、Tipton Environmental Internationalを買収――2016年までに500億円企業を目指す
  • 米国水環境連盟が国家水インフラサミットを開催――水インフラ投資を怠れば米国経済に悪影響と指摘するとともに米議会での証言でもその必要性や雇用創出の効果を主張
  • 中国北京市、2013年に汚水処理費引き上げやより厳格な工場排水標準のドラフト策定に取り組む見通し
  • アフリカ地域の水インフラ、民間投資に期待するも前途多難

特集

タイ水市場で躍進するHydrotek社の経営理念と最新の企業概要

中国水市場コラム

中国の排水市場に関する動向

主要プレーヤーの動向

Veolia

  • Veolia Water(2013年3月~5月の主な動向)
  • Veolia Environment、2012年決算を発表
  • Veolia Water、2地域で水道事業の売却を発表
  • Veolia、ピッツバーグの上下水道運営の好業績で特別報酬を獲得

Suez

  • Suez Environment(2013年3月~5月の主な動向)
  • Degrémontがアフリカにおける事業を拡大
  • Suez Environmentの経営陣刷新について、Debon新CEO代理に訊く
  • 欧州の低成長を受けてSuez Environmentの収益が停滞

GE

  • GE(2013年3月~5月の主な動向)
  • GE、産業向け水処理に重点――GE Power & WaterのMarkhoff水・プロセス技術部門CEOが明かす戦略

Siemens

  • Siemens(2013年3月~5月の主な動向)
  • Siemensの水事業部門の売却に対して、ドイツBilfingerが入札を検討していると報道

研究開発動向

  • 米国LLNL、コンデンサ式海水淡水化法の大幅な効率改善を達成――逆浸透法や蒸発法をしのぐと期待される
  • サウジの大学、MITと共同で石油・ガス井の水処理用新システムを開発――途上国での淡水化にも応用可
  • 南アでカーボン・ナノチューブ利用の油水分離膜を開発
  • フィンランドでナノ多孔膜の新製法を開発――大幅なコストダウンを達成

注目企業の戦略動向

  • ACCIONA Agua、UAEにて淡水化プラントの建設を受注――3.7 kWh/m3という大幅なエネルギー効率向上をめざす
  • BASF、世界的規模となる水処理用化学品の生産工場を中国・南京で稼働――アジアでの展開を加速
  • BASF、業務効率化に向けて水処理事業と石油・鉱業事業を統合
  • Bechtel、Chevronの廃水処理技術を買い取り
  • CH2M HILL、インド市場で売上8000万ドルを目指す――水事業は大都市での受注を狙う
  • Doosan、サウジアラビアにWater R&Dセンターを設立
  • Dow Chemicalの家庭用浄水膜分野での動向
  • Hyflux、中国雲南省の2都市と水関連プロジェクトで協力していく覚書を締結
  • IBMとWaterfund、世界各地の水原価指標の開発で提携
  • IDE Technologies、ノルウェーのStatkraftと浸透膜発電プラントの設計・建設で合意
  • Kemira、石油・ガス分野での化学品事業を強化することを発表
  • Manila Water、東南アジア3か国での事業拡大へ――フィリピンを最も優先度の高い地域に
  • Microvi BiotechnologiesとMWH Global、アジア太平洋地域の大規模浄水・廃水処理プロジェクトで提携
  • Modern Water、中国および中東での事業拡大に向けて1550万ドルの投資を発表――背景にはFO膜への期待が
  • ロシア最大の水力発電会社RusHydro、国内の上下水道事業の一元管理を申し出る
  • RWL、Frost & SullivanからM&A優秀賞を授与――買収企業による相乗効果が評価される
  • Severn Trent Services、中国天津市の下水処理施設への脱窒フィルターの供給契約を締結
  • TaKaDu、オセアニア地域における水ネットワーク監視事業でSKMと提携
  • Thames Water、2015-2020年の投資に向けたアライアンスを結成――総額450億円規模
  • VA Tech Wabag、ウガンダ共和国大統領と会談し同国での水事業に意欲を示す
  • Xylem、上下水道向けの監視・制御サービス強化に向けて豪MultiTrodeを2600万ドルで買収
  • イスラエルのスマート・ウォーター企業、国外への進出を加速させる

地域別の市場・政策・規制動向

国際

  • Carbon Trust、節水の優良企業を認証するWater Standardを開始
  • Ford社、2012年の水使用量は前年比8.5%減を達成――世界中の工場で節水や水の再利用を実施

欧州

  • 欧州委員会、水道事業の民営化に対して中立の立場であるとの声明を発表
  • EU加盟国が水規制に関する改正案を却下――3種類の医薬物質は優先リストに追加されず
  • EU飲料水指令の見直しの必要性を示唆――英国の研究チームによる研究結果
  • イギリスの水サミットにイスラエル企業を招待
  • デンマーク、下水処理事業への民間企業の参入を促す水市場成長戦略を策定
  • ハンガリー、水道料金引下げと公共事業税導入で水道事業に混乱の危機
  • ロシア、排水に関連した2つの政府決定を公布

米州

  • 米オバマ政権、連邦政府による水資源への投資のための原則と実施指針を更新へ
  • 米上院委員会を水インフラ資金・改革法案が通過
  • 米上院を水インフラ資金・改革法案が通過
  • 増大する米国水インフラ需要と進化する「設計‐建設方式」 ――DBIA主催の会議参加者は増加の一途、全米から地方の公共事業体も参加
  • NACWA、WERF、およびWEF、アメリカの下水道ユーティリティの未来を描く報告書を公表
  • NSF Internationalが配管用エポキシコーティング材に関する性能規格ASTM2831と健康影響規格NSF/ANSI61の両規格で認証開始――最初の認証コーティング材は「CuraFlo’s CuraPoxy LS Coating」
  • 5つの認証機関が未規制化学物質の飲料水規格の統一化へ動き出す
  • ブラジル政府、河川湖沼等の管理改善に5年で約49億円を州に交付へ

アジア

  • ADB、アジア太平洋地域の水の安全保障に関する報告書を公表――インドなど8か国が危機的水準と評価
  • 中国国家発展改革委員会、「海水淡水化産業発展“十二五”計画」を公表――重点プロジェクトに対し補助を行う意向示す
  • 中国、国家海水淡水化産業連盟が正式に発足――海水淡水化事業の発展を促進へ
  • 中国広東省、水質環境整備に向けた2020年までの行動計画を発表
  • 中国国土資源部が公開した地下水水質データに弁護士らが不満表明――国内メディアが報道
  • 台湾環境保護署、「水質汚濁防止措置および測定申告管理弁法」を改正
  • インド・マハーラーシュトラ州、企業に対して水の再利用などを義務付ける案を検討
  • インド・オリッサ州、今後10年間に渡る都市部への給水政策を準備
  • インド、水資源の保全に向けて洗濯機などに対する節水ラベルの導入を検討
  • タイ、水資源の包括的な管理を担う新たな行政組織「水資源省」の設立へ――2013年10月までに設立される見通し
  • タイ、水資源法案の議論を再開————2013年内に法案策定、内閣提出へ
  • ベトナム、2030年までのハノイ給水計画を承認
  • ベトナム、「排水に対する環境保護料金」に関する政令第25/2013/ND-CP号を公布
  • フィリピン、統合水品質管理フレームワーク(IWQMF)を採択――既存の水質汚染対策を統合する取り組みが形に
  • シンガポール、企業の節水管理を支援する新たな国家規格SS 577:2012を発表

その他

  • サウジ、造水量60万m3/日となる世界最大の淡水化プラントを建設へ
  • カタール、水と電力に向こう数年で220億ドル投資へ
  • トルクメニスタンで今後、統合的水資源管理に向けた法の策定が進められる見通し――UNECEが公表
  • ニュージーランド政府、資源管理法の改正を含む水管理の抜本的な改革案を提出