第51号(2014年8月発行) – 再生水の導入に向けた世界の潮流、米国EPAは積極的な姿勢を示す

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EnviX「水ビジネス・ジャーナル」51号(2014年8月発行)の目次と主要トピックをお伝えします。

はじめに

水不足が深刻さを増すなかで、排水を再利用する動きが世界的に広まりつつあります。特に下水を処理して利用されるものは再生水と呼ばれており、世界全体の再生水市場は2025年には2.1兆円に成長すると試算されております。水ビジネス全体の市場規模からするとこの額はわずかであるかもしれませんが、市場の成長率は大きいため注目が集められております。なお、世界全体では一日当たり2100万m3もの再生水が生産されており、国別に見ると米国が圧倒的に多いという結果になっております。

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図 処理排水の再利用量の国別割合
(出典:National Research Council, Water Reuse: Potential for Expanding the Nation’s Water Supply Through Reuse of Municipal Wastewater)

この再生水ですが、有名な取り組みとしてはシンガポールのNEWaterがあります。水不足に悩む同国は、国内で消費される水の4割近くをマレーシアからの輸入に頼っていますが、2061年にこの契約が切れるため代替施策が求められてきました。そこで注目されたのが再生水で、2003年に最初の処理プラントが完成し、2010年には日量5000万ガロンを処理することのできる最大級のプラントが作られ、現在では国内需要の30%をこのNEWaterが賄っております。2060年までにはこの値を55%にまで拡大することが目標となっております。

さて、再生水に関する検討は世界各地で着々と進められており、このEWBJ51号でも関連するいくつかの情報をお伝えしております。まず欧州ですが、再生水の利用促進に向けた動きがEUレベルで高まってきています。2006年時点でのEUにおける再生水の量は年間9億6400万m3(なお、この値は処理される下水の2.4%にあたる)ですが、2025年には年間32億2200万m3になると予測されています。このため欧州委員会は、関連する政策についての意見公募を開始し、再生水の利用についての最適化を図ろうとしております。

また、上記のように世界で最も再生水が利用されている米国では、特にアリゾナ州、カリフォルニア州、フロリダ州、テキサス州でその利用が比較的進められております。そのような現状のなかで米国環境保護庁(EPA)は、再生水の飲用利用に関するガイダンス作成に着手しました。特に今回のガイダンスでは、飲用水としての直接利用について言及されるものと見込まれており、その内容には注視する必要があります。

そのほか、オーストラリアでも再生水に対する関心は高まっております。ただし同国では、特に飲用水としての利用には市民は抵抗を感じているという調査結果もあり*1、今後の政策の行方が気になるところです。

上記のEUと米国のそれぞれの記事、さらに再生水に関連する記事としてEWBJ51号では以下を報告しております。

  • 水の再利用促進に向けたEUレベルの政策案について欧州委員会が意見公募を開始
  • 米EPA、再生処理済み下水の飲用再利用に関するガイダンスを作成へ
  • CH2M HILLとThiessのJV、オーストラリア初となる地下帯水層に処理水を注入するプラントの設計・建設・運営契約を獲得
  • 米オクラホマ州で飲用水再利用法が成立
  • 米テキサス州グレアム市、水不足対策で飲用水再利用を検討

今後も米国を中心に再生水に関する議論は盛んになるものと予想されます。EWBJではその重要な動向をウォッチし、報告していきます。

その他、EWBJ51号では中国水市場コラムとして「小都市・農村部における生活排水処理」にスポットを当て、その関連政策や主要中国企業の概要、そして今後の展望をまとめております。

*1 EWBJ47号に関連記事有り「オーストラリア、下水の飲料水利用に対して市民は抵抗感を持つ」

巻頭トピック

  • AECOM、URSを40億ドルで買収へ――エンジニアリング・デザインの世界トップが第3位を吸収
  • CH2M HILLとThiessのJV、オーストラリア初となる地下帯水層に処理水を注入するプラントの設計・建設・運営契約を獲得
  • 水の再利用促進に向けたEUレベルの政策案について欧州委員会が意見公募を開始
  • 米EPA、再生処理済み下水の飲用再利用に関するガイダンスを作成へ
  • 中国・国家海洋局、「2013年全国海水利用報告」を公表――造水容量は日量90万トンを超える

中国水市場コラム

中国、小都市・農村部における生活排水処理

主要プレーヤーの動向

Veolia

  • Veolia Water(2014年6月~8月の主な動向)
  • 米ワシントンDC水道局、Veolia Waterとの官民協力で年間最大1200万ドルを節約へ
  • Veolia、アラブ首長国連邦Masdar社と淡水化プログラムで協力合意
  • Veolia Water、豪州ハンター地域の上・下水道処理施設の運転維持管理業務を受注
  • Veolia Water、中国の青島事業を含む水ビジネスの一部を光大水務に9200万人民元で売却――中国での事業を縮小する方向へ

Suez

  • Suez Environment(2014年6月~8月の主な動向)
  • Suez Environment、石油・ガス市場への戦略的展開を視野にProcess Groupを買収
  • Suez Environnement、スペイン投資会社Criteria Caixaholding社とのパートナーシップを強化――スペインおよびチリでの地位向上を目指す
  • Suez Environnement、蒸発技術および結晶化技術に特化したEvathermの株式を取得――産業顧客向け水処理ソリューションのさらなる充実化を図る
  • イタリアの水ビジネス業界の整理統合を睨んだSuez Environnementの動き

GE

  • GE(2014年6月~8月の主な動向)
  • GEとスウェーデン化学WIBAX Energy社、北欧地域でGEの水処理関連製品を販売する戦略的アライアンス形成
  • GE Power & Water、イギリスのMonsalを買収――廃水からバイオエネルギー回収へ

研究開発動向

  • メキシコのケレタロ州工科大学、鶏の羽のケラチンをベースとした汚水の重金属除去膜を開発
  • 正浸透による海水淡水化は逆浸透よりもエネルギー効率が低い――MITの研究者らが論文発表

注目企業の戦略動向

  • Abengoa、チリで淡水化プロジェクトを受注――同社としてはチリで初
  • Abengoa、米で初の自治体への水供給プロジェクト契約を獲得――テキサス州サンアントニオ市
  • AECOM、「スマーター・ウォーター」でIBMと提携
  • Dow Chemical、サウジアラビアにRO膜製造施設を建設
  • 韓国のGS E&C、チュニジアで淡水化プラント建設を受注――欧州、アフリカに進出へ
  • Hyflux、メキシコの水プロジェクト獲得に向けて同国の金融機関と覚書を締結
  • 米PinnergyとShalewater Solutions、シェールガス開発における水処理事業においてジョイントベンチャーを設立
  • 米国テキサスとミズーリにおけるSchneider Electricsの水道省エネ等のプロジェクト
  • イスラエルのTaKaDuとスペインのFCCが水道の効率化で提携
  • Xylem、欧州最大の廃水処理場へのポンプ納入契約を受注
  • 重慶水務集団、Suez Environnementらと合弁協定を結び環境産業の多角化へ
  • 中国・北控水務、国内事業に加えて海外進出も積極展開する意向を示す
  • 碧水源とSchneider Electric、中国水市場での更なる躍進に向けて戦略的パートナーシップを締結
  • 中国・華儀電気、国内の環境企業2社と戦略的協力関係を締結――汚水処理および汚泥処理分野に進出

地域別の市場・政策・規制動向

国際

  • ウォーター・フットプリントを評価する新たな国際規格ISO 14046:2014が発行される

欧州

  • 欧州企業の4分の3が自社事業かサプライチェーンで水リスクに直面――NPO調査
  • 欧州「水枠組み指令の2015年目標は達成できない」ドイツ研究団体が共同研究
  • オランダの飲料水、医薬品など新たな物質の脅威に直面――政策文書で注意を喚起

米州

  • 米サンディエゴ郡水道公社の水供給計画をめぐり、環境NPOが提訴
  • 米議会、州回転基金からの貸付金の対象プログラムを増やす水資源関連法案を審議中
  • 米オクラホマ州で飲用水再利用法が成立
  • 米オバマ大統領、水資源改修・開発法を承認し署名――米公益事業者協会が賞賛
  • 米下院に水の使用効率改善等をはかる2本の法案上程――上院の法案と呼応
  • 米テキサス州グレアム市、水不足対策で飲用水再利用を検討
  • カナダの飲料水基準、他の先進諸国と比べて大きな遅れ――環境NPOが指摘
  • CG/La社、今後3-18ヶ月でラ米で開始する水インフラプロジェクトは合計US$176億にのぼり、水インフラは有望市場との位置付けを発表
  • メキシコ経済省規制局、2014年度の節水などを目的とした各種規約策定計画を発表
  • メキシコの上下水道整備計画実施に向けて、フランス政府とドイツ政府それぞれがUS$1億融資
  • メキシコ、上下水インフラ改善の為の資金の割り当て基準に関するガイドラインを公布
  • コロンビア、首都所在県の上下水道インフラプロジェクトにUS$3億8800万、その他の主要都市圏でUS$1億8900万の投資を発表
  • エクアドル水資源省、スペイン企業2社と水関連プロジェクトで協力合意締結
  • エクアドル国民議会、水資源の民営化禁止などを盛り込んだ水資源使用・利用法案を承認
  • ブラジルのリオグランデ州水道公社、2018年までに上下水道インフラに44億レアル投資予定
  • ペルー水資源国家当局ANA局長、2021年の水の追加需要が204ギガリットルに達する為、節水管理の緊急性を強調――2021年までにUS$220億の投資が必要
  • パラグアイ公共事業・通信省の上下水道局長、上水道普及率75%と下水処理率50%を目指した2018年までの24億ドルの投資計画を発表
  • チリの建設商工会議所、チリの発展の為には2018年までにUS$36.5億の水インフラへの投資が必要とする報告書発表
  • チリの衛生監査局、下水道管破損及び、浄水基準を遵守していない下水道会社2社その他へ罰則措置
  • チリ政府、国内23社の上下水道サービス会社の評価報告書を発表

アジア

  • 中国におけるMBR市場調査結果、碧水源がトップシェア
  • 中国、土壌修復市場は5年内に業界再編、先端技術を重視
  • 中国政府、水質汚染防止行動計画を正式決定へ――企業にとってはリスクとビジネス・チャンスの両面
  • 中国、水処理用膜関連市場の規模は最大500億人民元に成長する見込み
  • 中国政府、全国の廃水処理施設を調査――監督の不備等が判明
  • フィリピン、全ての国民に水を供給するためには、2025年までに930億ペソが必要

その他

  • オーストラリアの水利権取引、米国南西部やほかの国々のモデルとしてもてはやされる
  • オーストラリアSydney Water、下水処理事業の民営化を検討
  • イエメン、国内初の淡水化プラントの建設の準備を進める