第57号(2016年2月発行) – 水ビジネスにおけるM&A

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EnviX「水ビジネス・ジャーナル」57号(2016年2月発行)の目次と主要トピックをお伝えします。

はじめに

エンヴィックス・水ビジネスジャーナル(EWBJ)は様々な外資系企業の水事業戦略を報告しておりますが、その中でも特に大きな関心事である「水ビジネスにおけるM&A」について、今回は紹介したいと思います。

EWBJでは、2000年の発行以来、多くの外資系企業のM&A事例を報告してきました。近年もっとも世間を騒がせた案件としましては、2013年のSiemensによる水事業売却が挙げられるでしょう*1。Siemensは2004年~2012年にかけて水関連企業の買収を続けてきましたが、ビジネス・ポートフォリオの見直しを余儀なくされ、他部門とのシナジーが少ない水処理分野を中心に売却することとなりました。このほかにも、水ビジネスに関するM&A案件を調べたい方は、以下のWEBページを参照ください。EWBJでこれまでに報告してきましたM&Aの事例をまとめております(2016年2月末時点で130件超)。
http://water-business.jp/tag/ma/

そして、この57号でも非常に興味深い事例としまして、中国の成都天翔環境グループによる、ドイツ大手ゼネコン企業Bilfingerの水処理部門の買収を取り上げております*2。対象となった事業部門はBilfingerのWater Technologies部門で(下図)、従業員数1600人、2015年の売上2億8200万ユーロに上ります。

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図 Bilfingerの事業ストラクチャー
(出典:Bilfinger Annual Report 2014よりEnviX作成)

Bilfingerはこれまでに、2012年のイタリアDiemme Filtration社の買収*3、2013年の米国Johnson Screens社の買収*4などを行い、一時は、冒頭で紹介したSiemensの水事業売却の買い手先候補としても挙がっていました*5。しかし今回、全社的な事業ポートフォリオの見直しを理由として中国企業に売却することとなりました。このBilfingerのような、海外の水企業を買収することで成長を狙っていったにも関わらず、最終的には社内の事業再編によって売却してしまうという例は、冒頭で紹介しました同じくドイツ企業Siemensとも類似しております。日本の水ビジネス企業にとっても非常に示唆に富んだ案件と言えるでしょう。

また、今回の事例でもうひとつ特徴的なポイントとしまして「中国企業による買収」という点が挙げられます。このEWBJで毎号掲載しております「中国水市場コラム」をまとめている清華大学 環境管理・政策研究所 常杪 所長によると、外資系環境ビジネス企業を狙った中国企業による買収が近年盛んになっているとのことです。13次五カ年計画などを背景に、水ビジネスを含んだ、中国国内での環境ビジネス市場は今後ますます拡大していくものと見込まれるため、技術力のある外資系企業が買収先候補に挙げられているのでしょう。是非、こういった点にもご注目ください。

そのほか、今号の特集では、「米国における水不足問題の現状」と題して、米国での水不足に端を発する諸問題、法規制、ビジネスチャンスをまとめております。さらに、このさきのEWBJ 58号(2016年5月末)、59号(2016年8月末)、60号(2016年11月末)でも、米国の淡水化市場、再生水市場、水削減技術市場についてまとめた特集を予定しております。

最後に、今回の中国水市場コラムでは「中国の小都市・農村部における生活排水処理の最新動向とその分析」と題して、中国の農村部に焦点を当て、その生活排水の現状、関連政策・規制、企業の動向についてまとめました。

*1 EWBJ48号に関連記事有り「Siemens、水ビジネス部門の一部をAEA Investorsに売却することを正式に発表」
または、以下のページ冒頭でも紹介しております。
http://water-business.jp/volume/no_48/

*2 EWBJ57号に関連記事有り「Bilfinger、事業ポートフォリオ見直しの一環としてWater Technologies部門を成都天翔環境グループに売却」

*3 EWBJ42号に関連記事有り「ドイツのPassavant-Geiger、イタリアのDiemme Filtrationを買収」

*4 EWBJ45号に関連記事有り「Bilfinger、米国の水技術専門会社Johnson Screensを買収」

*5 EWBJ46号に関連記事有り「Siemensの水事業部門の売却に対して、ドイツBilfingerが入札を検討していると報道」

 

巻頭トピック

  • Bilfinger、事業ポートフォリオ見直しの一環としてWater Technologies部門を成都天翔環境グループに売却
  • 米RWL Water、メキシコ水市場への展開強化に向けてQuimica Apollo社とジョイントベンチャー設立
  • 米の下水インフラ維持・改善に2710億ドルが必要――EPAの調査
  • 台湾、再生水資源発展条例を公布――国内での再生水利用の拡大を目指す
  • サウジ、2025年までに淡水化に800億ドル投資へ

特集

米国における水不足問題の現状

中国水市場コラム

小都市・農村部における生活排水処理の最新動向とその分析

主要プレーヤーの動向

Veolia

  • Veolia(2015年12月~2016年2月の主な動向)
  • Veolia、株主総会で2018年までの戦略計画を発表

Suez

  • Suez Environnement(2015年12月~2016年2月の主な動向)
  • Suez、中国・江蘇省の工業団地での産業廃水処理で現地企業と合弁
  • Suez Environnement、2015年は人口増加国での活動拡張
  • Suez、インド2州の水当局と6つの契約を締結――水大手Driplex社の過半も取得
  • Suezグループ、サブサハラアフリカの6つの国で9つの水管理契約を受注

GE

  • GE(2015年12月~2016年2月の主な動向)

研究開発動向

  • シンガポール国立大学、従来技術よりも30%コストダウン可能な水処理膜を開発

注目企業の戦略動向

  • ACCIONA Agua社のCEO、海水淡水化は淡水供給の代替手段としての地位を確立
  • American Water、GISを利用した水資源管理システムの開発に向けてCorona Environmentalと提携
  • Desalitech、Pall Corporationと提携――MF、UF、ROを統合した水処理ソリューションの提供を目指す
  • Evoqua、バラスト水管理でDrew Marineと提携
  • Grundfos、低エネルギーのAQpure浄水システムをタイで実地テスト
  • H2O Innovation、新たに3つの国で販売契約を締結
  • K-water、南アジアへのスマート・ウォーター・マネジメント技術導入でアジア開発銀行と協力
  • Manila Water、インドネシアの無収水対策で現地ユーティリティと覚書
  • Modern Water、正浸透と多段フラッシュ法を組み合わせた淡水化技術の商業化でBilfinger Deutsche Babcock Middle Eastと提携
  • メキシコ石油公社Pemex、石油生産及び精製での汚水処理インフラ投資を目的として、ファンド会社GWDPと合弁事業立ち上げ
  • Xylem、ホーチミン市の浄水場拡張に最新処理技術を提供――ベトナム初のオゾン処理も

地域別の市場・政策・規制動向

国際

  • 世界32企業がビジネス同盟を発足――気候変動に対する水資源の持続可能な管理を追求

欧州

  • アイルランドのコークなど3州、下水処理がEUの基準を満たさず――下水インフラへの更なる投資が必要
  • スペイン内閣、汚染や劣化から地下水を保護する法規を修正する勅令案を承認
  • オランダ環境省、今後6年を対象とした新たな「国家水計画」を策定

米州

  • 米EPA、ニューイングランド6州の上下水道インフラ改善に総額1.6億ドル余を低利融資
  • 米議会、マイクロビーズ禁止法案を可決
  • 雨水やグレー・ウォーター、代替水源としての安全な利用にガイドラインが必要――全米アカデミーズが報告書
  • 米EPA、飲料水規制物質候補リスト3収載の4物質を規制せずと最終決定
  • 米国、鉛含有量告知の要件を強化する安全飲料水法改正案が下院を通過
  • カナダのオンタリオ州、飲料水の水質基準を改正し新たに塩素酸塩等の含有基準を制定
  • カナダ・BC州、2015年8月の地震を水圧破砕によるものと断定
  • 国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会、ラテンアメリカ地域における2005-2015年の水に関する法体系変遷をまとめた報告書を発表
  • コロンビア国家開発庁などの調査、上下水道普及と上水道の水質に問題があることを指摘――地方の上下水サービス会社の統合が推奨される
  • コロンビア環境省、水質、大気汚染、廃棄物などの環境管理に関する100以上の数値と情報を公表する環境情報システムを立ち上げ
  • ペルー環境省、水質基準を改正する政令を公布
  • チリ銅資源局、銅資源開発の淡水使用量は2026年までに19%減り、海水使用は4倍になるという報告書を発表
  • チリの環境監査局、大手製紙会社の汚水排水違反に対し、罰金額が3000万米ドルに達しうる起訴プロセス開始

アジア

  • 中国、海綿都市への年間投資額4000億元を見込む
  • 中国政府、「節水・汚水対策・水生態修復に関する先進適用技術指導目録」を公表――より効率的な需給間マッチングを目指す
  • 中国上海市、水汚染防止行動実施計画を可決
  • 中国福建省、土壌汚染防止弁法を施行――違法行為に対し最高20万元の罰金が可能に
  • 韓国環境部、水質汚染物質の追加指定および排出許容基準の設定を推進へ
  • 台湾水利署、水リサイクル・プラントを6基建設へ――150億台湾ドル超の予算を準備
  • 台湾環保署、改正された水汚染防止法施行細則を公表
  • 台湾のフラットパネルメーカーAUO、台湾初となる排水ゼロを達成
  • マレーシアの鶏肉加工工場、水道の違法利用を理由に強制捜査――300万円相当の水道水を違法で使用
  • インド、地下水の利用申請の審査に係る評価基準ガイドラインを発行――地下水涵養措置および廃水リサイクルを義務化
  • インド、中央排水処理施設の排水基準を改正――硝酸性窒素やリン、バナジウムなど規制対象項目を追加
  • インド、繊維業を対象とした排水基準強化案に対して繊維省が反発――ZLD技術の導入義務化をめぐり対立
  • インド政府、複合年賦方式PPPモデルで下水システムの改善を加速へ

その他

  • 南アフリカ西ケープ州、淡水化の利用を検討中――エネルギーの確保が課題