第58号(2016年5月発行) – 消費者と生産者、「節水」の海外の最新状況

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EnviX「水ビジネス・ジャーナル」58号(2016年5月発行)の目次と主要トピックをお伝えします。

はじめに

水不足への対応策として、使用する水の量を減らす、いわゆる「節水」がありますが、今回はその節水について「消費者」と「生産者」、それぞれの領域における海外の最新状況を紹介したいと思います。まず消費者側での節水ですが、日々の生活のなかでの水の無駄をなくすことが重要であり、それを手助けする方策のひとつとして節水ラベルの付いた製品を購入するという手段が挙げられます。洗濯機、トイレ、蛇口、シャワーヘッドなどがその対象製品に挙げられており、水不足が深刻な国では節水ラベル制度の導入が進んでおります。有名なものとしては米国のWaterSenseラベル、オーストラリア、シンガポール、台湾の節水格付けラベルなどです(下図;なお各国の所轄当局のホームページでは、実際にラベル取得条件を満たした製品名も公開されております)。特にこのなかでも台湾の節水ラベルについては、従来は任意制度でしたが、2016年5月に公布されました「改正水道法」によって、対象製品への節水ラベルの表示が義務化されることとなりました*1。本制度を主導する台湾・経済部によると、一般家庭用の設備を節水型に交換した場合、一人当たりの平均水使用量は約173Lから158Lまで減少し、先進国の基準に近づくことができるとのことです。上記の国以外ではインドでも同様の制度が検討されており、人口10億人を抱える同国の市場規模を考えると、節水性能が高い各種製品のニーズは加速していくでしょう。

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図 世界の各種節水ラベル(左から米国、オーストラリア、シンガポール、台湾の例)
(出典:各種資料よりエンヴィックス作成)

次に、生産者としての節水活動ですが、やはり大きなポイントは、生産プロセスでの水使用量を削減することではないでしょうか。具体的には、米国の自動車メーカーであるFord社の事例がございます*2。2000年からFord社は節水などの取り組みを開始し、自社の冷却塔から部品洗浄や塗装といった全ての工程において水使用量を削減してきました。その結果、同社の世界全体での年間水使用量は、2000年の6400万 m3から、2012年には2400万 m3へと削減されたとのことです。この節水活動の一環としてインド・チェンナイの同社の組み立て工場では新システムが導入され、水の100%リサイクルを達成しております。このようなFord社の行動はあくまで企業の自主的なものではありますが、近年ではそういった取り組みを奨励するための政策や規制を政府が公布しています。中国で2016年4月に発表されました「水効率トップランナー行動実施方案」は、その種の制度のなかでも最新のもので、工業、農業および生活用水における水使用効率のトップランナーを選出し、水資源利用効率の向上を促進する方針を示すものとなっております*3。このなかで挙げられている「水使用企業トップランナー」の条件は、以下の通りです;

  • 単位製品当たりの水使用量が業界トップレベルに達していること。
  • 水資源利用の手続きに則っており、またこの3年間で水使用計画を超過して水を使用していないこと。
  • 節水管理制度を構築し、各生産プロセスにおける節水措置を講じていること。
  • 水使用量の計量と統計管理体系を構築し、計量器具が国家基準「水使用企業水計量器具配置と管理通則」の要求を満たしていること。

なお、水効率トップランナーに選出された企業は以下のマークを使用することが可能になります。

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図 中国 水効率トップランナー・マーク
(出典:中国・水効率トップランナー行動実施方案)

以上が節水制度に関する世界の最新状況ですが、これらは洗濯機や蛇口などを販売する企業、また工場で水を使用する生産者などにとって重要であることはもちろんですが、水ビジネスに関わるその他の企業にとっても、その国の水に対する意識、姿勢を知る上で参考になるでしょう。特に工場の生産プロセスでの節水においては、排水の再利用など、より高度な水処理機器のニーズなどが新たに生まれる可能性が大いに考えられます。

そのほか、今号の特集では、「米国における水不足に伴う今後の成長が期待される水ビジネス(1)淡水化技術」と題して、米国での淡水化市場および技術に関する最新情報を概説しております。

また、今回の中国水市場コラムでは「中国水産養殖業における汚染対策」と題して、中国国内での水産養殖にともなう水質汚染に関する最近の各種政策などをまとめました。

*1 EWBJ58号に関連記事あり「台湾、改正「水道法」を施行――洗濯機や蛇口、便器等への節水マーク表示を義務化」

*2 EWBJ46号に関連記事あり「Ford社、2012年の水使用量は前年比8.5%減を達成――世界中の工場で節水や水の再利用を実施」

*3 EWBJ58号に関連記事あり「中国国家発展改革委員会ら6部門、水効率トップランナー行動実施方案を発表」

巻頭トピック

  • Modern Water、インドにおける廃水処理のブライン濃縮でAdvent Envirocareと共同商業化契約を締結――ZLD市場の拡大を見越した動き
  • 豪のUnitywater、小規模水道事業者向けクラウド・ベースのネットワーク・モニタリング・ソリューションの提供でTaKaDuと提携
  • 中国・北京市、2019年6月までに河川への汚水の直接排出をなくす方針を打ち出す
  • 米国カリフォルニア州、干ばつに対する長期的対策として再生水が高い支持を受ける
  • UAE、2026年までに新たに4箇所の海水淡水化プラントを建設・操業予定――総投資額は950億円超

特集

水不足に伴う今後の成長が期待される水ビジネス(1) 淡水化技術

中国水市場コラム

中国水産養殖業における汚染対策

主要プレーヤーの動向

Veolia

  • Veolia Water(2016年3月~5月の主な動向)

Suez

  • Suez Environment(2016年3月~5月の主な動向)
  • Suez、中国における石油・ガス及び石油化学セクター大手と廃水処理に関する3つの契約を締結
  • Suez、首都圏代表らに下水から液体バイオ燃料を製造する先端システムを披露

GE

  • GE(2016年3月~5月の主な動向)
  • GEとAmerican Water、喫緊の水問題の解決に向けてデジタル・イニシアティブを結成
  • GE、持続可能な水の未来のための4つの約束
  • GE、中国の石炭化学プラントにZLD廃水処理技術を提供

研究開発動向

  • 充電の原理を応用した低エネルギーの淡水化――イリノイ大学の研究
  • 3層チューブ状マイクロボットによる廃水中の重金属の除去

注目企業の戦略動向

  • Consolidated Water、Aerex Industriesを買収――サプライチェーンの垂直統合と米国市場進出を狙う
  • シンガポールのDarcoとAquaporin Asia、正浸透技術をベースとしたZLDシステムのプロジェクトで提携
  • Desalitech、上水道向け高効率浄水ソリューションでTreatment Equipment Companyと提携
  • Dow Chemical、アイルランドOxyMem社の廃水処理技術に出資――MABR技術の商業化を推進
  • Evoqua、濾過・殺菌機器メーカーのNeptune Bensonを買収
  • スペインの水事業エンジニアリング会社INCLAM社、売り上げの95%は中南米を始めとするスペイン国外
  • ItronとEl Maasara Engineering、エジプトの水損失対策のために共同で水道メーター開発へ
  • MetitoとBiopipe、世界初の生物学的下水処理管を発表
  • RWL WaterとPraxair、廃水の好気性処理システムを共同マーケティング
  • Tetra Tech、INDUS Corporation買収で水道データ管理サービスを拡充

地域別の市場・政策・規制動向

欧州

  • ドイツ参議院、医薬品残留物による水質汚染にメーカーの経済的責任を求める勧告
  • スペイン・カタルーニャの高等裁判所、Agbar社の飲料水供給せービス契約を無効とする判決を下す

米州

  • 米NY州、PFOAを州スーパーファンド法の有害物質に緊急指定――水道水汚染で
  • ウィスコンシン州の水道民営化法案にまつわる諸問題
  • 米EPA、水再利用と水資源節約の研究に330万ドルを補助
  • アンデス開発公社CAF、南米主要国の上下水道普及状況や課題をまとめた報告書を発表
  • コロンビア、上下水道完全普及のためには2030年までに145億ドルの投資が必要
  • ペルー、汚水処理プラント調査報告書を発表――90%のプラントが排水許可を取得しておらず、殆どが最大許容値を遵守していない
  • ペルー国会に、水資源の責任ある使用と水質の確保を国益とする法案が提出される
  • チリのPwC社、国内での水資源がビジネスに与える影響やリスクをまとめた報告書を発表
  • チリと韓国、水資源管理の協力体制構築のためのMoUを締結――淡水化に関する情報交換や技術アドバイスなどが対象に

アジア

  • 中国・江蘇省、国内初となる差別化汚水処理費徴収政策を実施――環境保護信用評価等級に基づき汚水徴収基準を決定
  • 中国のMBR市場、今後さらなる拡大が見込まれる
  • 中国・上海市、「汚水処理費徴収・使用管理実施弁法」が2016年3月1日より施行――「排水費」の名称を、「汚水処理費」に変更
  • 中国、「土十条」を2016年内に公表へ――巨大な土壌修復市場が期待される
  • 中国国家発展改革委員会ら6部門、水効率トップランナー行動実施方案を発表
  • 台湾環保署、特別保護農地水系の重金属規制値を厳格化した改正版放流水基準を公布
  • 台湾環保署、「排出する廃水(汚水)に含まれる恐れのある汚染物質ならびにその濃度および排出量を明示すべき事業」を公告
  • 台湾環保署、「水汚染防止費徴収弁法」の改正を予告
  • 台湾、改正した「排水管理弁法」を施行――排水企画書および排水計画書の提出に関する規定を追加
  • 台湾、改正「水道法」を施行――洗濯機や蛇口、便器等への節水マーク表示を義務化
  • インドネシア、企業からの排水に対して水質センサーの設置義務化を予定――2017年からの開始を見込む
  • インドネシア、低所得世帯への優先的な浄水供給を目指す
  • タイ財務省、工場からの排水に含まれる汚染物に応じた課税案を検討中
  • ベトナム、地表水などの各種水源の水質基準値を改正する通達を制定
  • ベトナム、バイオエタノール加工業と水産業における排水基準値を定めた通達を制定
  • ベトナム、土壌中の重金属許容値に関する技術基準を改正――新たにCrが規制対象に
  • ベトナム、2025年までの都市部排水管理目標を定めた首相決定を制定
  • インド、製糖業の排水基準を強化――取水量を測定するための流量計設置義務や複数の排水口の設置禁止など、基準値以外にも様々な条件を規定

その他

  • 豪州South East Water、上下水道のアセット管理において国内で初となるIoT技術の導入を発表
  • アブダビの淡水化への投資、2030年までに倍増が必要