第59号(2016年8月発行) – 水不足が激化するインドの政策・法令、市場動向

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EnviX「水ビジネス・ジャーナル」59号(2016年8月発行)の目次と主要トピックをお伝えします。

はじめに

水に関するリスクが世界中で顕在化するなか、水不足が激化するインドではすでに大きな被害が発生しております。インド現地のメディアが報じたところによると、同国マハーラーシュトラ州産業開発公社(MIDC) が手掛けた3つの工業団地(Sinnar、Satpur、Ambad:いずれもマハーラーシュトラ州ナーシク)にて、給水制限が実施され、中でも最も深刻な状況のSinnar工業団地では2016年5月、工業生産のための水の給水が停止されました。同工業団地に入居していたあるパイプ製造会社は、通常ならば毎日90万リットルの水を使っていたのですが、断水によって数日間の生産停止を余儀なくされたとのことで、この給水制限による工業団地全体での損失額は3~4カ月間で約30億ルピー(約45億円)に上りました。この工業団地では、製薬会社、食品会社、ガラス容器メーカーなども影響を受けており、そのなかには外資系企業も含まれております。また、ある飲料メーカーにおいては、インド・ケーララ州の工場での地下水過剰採取に対して議会が取水を停止するよう決議を下したという例もあります。

さて、インドの水リスクを調べるうえでの有益なツールとして、NestleやPepsicoなどの企業と世界資源研究所(WRI)などのNGOが協力して作成した“India Water Tool”と呼ばれるデータベースがあります。これは、インド国内の地下水利用量や表層水利用量など様々なデータを提供しているものですが、そのひとつに“Baseline Water Stress”という指標があり、水資源の利用可能量に対する取水量の割合を示しています(下図)。インド国内の多くの地域が高い水ストレス下にあり、冒頭でも取り上げたSinnar工業団地も「高い」水ストレス地域に分類されております。

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図 インドにおけるBase Water Stressの分布(色が濃い地域ほど「水ストレスが大きい」ことを示す)
(出典:India Water Tool)

このような水リスクが進行する状況のなか、インドではいま「国家水枠組み法案(National Water Framework Bill)」が議論されています。この「水枠組み法案」は、国民に対し「生存のための水」として最低限の安全な水を得る権利を保証する法案であり、何人も対価を支払えないことを理由に「生存のための水」を得る権利を否定されるべきではないと規定しています。なお、「生存のための水」の定義は、「飲用、調理、入浴、衛生、およびこれらに関連する個人・家庭利用を含む各個人の生命に対する基本的権利に根源的に必要とされる水」と定められています。

人口増加と経済成長を背景にインドの水ビジネス市場は拡大しておりますが、インドでいま起きている水にかかわる問題やリスク、また関連する政策や法令などを正確に把握することが、市場に進出するための新しいアイディアやチャンスに繋がっていくでしょう。なお、VeoliaとSuezの両社ともにインド市場に大きな期待を寄せ、インド国内企業の買収なども視野に入れており、競争はますます激しくなるものと見込まれます*1

そのほか、今号の特集では、「米国の水不足に伴う今後の成長が期待される水ビジネス(2)再生水の利用」と題して、米国での再生水市場に関する最新情報を概説しております。

また、今回の中国水市場コラムでは「中国の黒臭水域問題および関連政策・取り組み」と題して、中国国内での黒臭水の問題とその解決に向けた政策、必要な技術などに関する最新動向をまとめました。

*1 EWBJ54号に関連記事あり「VeoliaとSuez、新興市場としてインドでの水ビジネスの拡大を狙う」

 

巻頭トピック

  • ACCIONA、マニラの浄水プラント建設でフィリピン市場に初参入
  • H2O Innovation、Utility Partnersを買収し、米国上下水道処理施設の運用・保守業務の市場に参入
  • Xylem、米計測機器大手Sensusを17億ドルで買収
  • インドの水不足、国内の工業生産に大きな痛手――マハーラーシュトラ州の工業団地では35億ルピーの損失
  • ドイツGWP、ウォーター4.0(第4次水産業革命)を宣言――水事業をデジタル化

特集

米国の水不足に伴う今後の成長が期待される水ビジネス (2)再生水の利用

中国水市場コラム

中国の黒臭水域問題および関連政策・取り組み

主要プレーヤーの動向

Veolia

  • Veolia(2016年6月~8月の主な動向)
  • Veolia、中国の燕山石油化学コンビナートの水サイクル全体の管理業務を受注

Suez

  • Suez(2016年6月~8月の主な動向)
  • Suez、下水道システムのインテリジェント管理ソリューションの提供を開始

GE

  • GE(2016年6月~8月の主な動向)

研究開発動向

  • MoS2膜のナノ細孔がナノスケールの発電機に
  • グラフェン酸化物を組み込んだナノセルロース・フォームで水を浄化

注目企業の戦略動向

  • Aquaporin、チューブ状FO膜の共同開発に向けて、ドイツBerghof Membranesとの提携を発表
  • Doosan、イランで海水淡水化プラント建設プロジェクトを受注
  • Evoqua、スクリーン濾過システムを製造するVAF FILTRATION SYSTEMS社を買収
  • Evoqua、UV-C殺菌装置メーカーのDelta UVを買収
  • LuminUltraとMicrobe Detectives、分子微生物学的ソリューションで提携――水中の微生物濃度をリアルタイムで測定・モニタリングするサービスを提供
  • マレーシアのRanhill、無収水関連ビジネスの拡大を狙う――年間売上2億リンギットを目標に掲げる
  • Spartan Environmental、米南部でオゾン水処理システムをターンキー方式で販売
  • TaKaDu、台湾の国営水道会社よりスマート水道網管理のパイロット・プロジェクトを受注
  • Water Planet、革新的な膜となる「PolyCera」を発表
  • カナダのWSP、Schlumbergerの産業向け水コンサルティング事業を買収

地域別の市場・政策・規制動向

国際

  • OECD、都市における水資源管理ガバナンスについての報告書を発表

欧州

  • ドイツ内閣、地表水令改正案を閣議了解――良好な地表水保全でEU基準と調和図る
  • ドイツ環境庁、建物や建築資材からの有害物質浸出による土壌・水質汚染問題に対処へ
  • ドイツ環境庁、地下水から薬物残留物が検出される原因と流入経路を解明
  • 英国で2016年地下水令が施行――モニターすべき汚染物質リストに新規物質を追加
  • ポルトガル、国家水計画が6月8日に内閣で承認予定

米州

  • 米EPA、PFOAとPFOSに関する飲料水健康注意情報を発表
  • 米ミシガン州、フリント市の水道水鉛汚染で仏Veolia社と米LANを民事告訴
  • 米EPA、2016年排出水ガイドライン計画の暫定版を公表
  • 米EPA、水圧破砕廃水のゼロ・ディスチャージの最終規則を公布
  • 米加州の油田関連廃水処理処分会社、飲料水源汚染をめぐるプロポジション65訴訟で和解
  • ラテンアメリカ開発銀行と米州開発銀行、農村部の水と衛生施設の普及状況をまとめた報告書を発表
  • メキシコ水委員会CONAGUA、農村部の上下水サービス供給を優先課題に
  • メキシコ水委員会と中国水資源省、水資源管理や排水の再利用などの技術協力を目的とするMoUの5年延長を合意
  • メキシコ、国内初となる太陽熱発電を利用した汚水処理場を開所――毎月50万ペソの電気代節約に
  • メキシコ環境省、水道の蛇口やバルブの鉛含有値及び節水仕様を規定する規約案を発表
  • メキシコ水技術庁、気候変動対策を何もとらないと、メキシコでは10年で水危機に陥る可能性があると発表
  • ブラジル上院の専門委員会、淡水化を奨励する法案を承認
  • ブラジル下院で質の高い水の使用制限に関する法案が審議中――水の再利用を促進
  • ブラジル政府、節水推進の為、集合住宅の各戸に個別に水道メーターを設置することを義務付ける法令を公布
  • チリ・公共事業省、国内初となる水図鑑を発表――水資源情報や飲料水普及、淡水化プラント情報を掲載
  • チリ銅資源開発庁COCHILCO、チリの鉱山開発での海水使用は2015年に33%増加したと発表

アジア

  • 中国天津市、水環境保護行政指導暫定弁法を公布――1日単位で連続的に処罰された企業に対する行政指導を開始
  • 中国、水資源税改革試行暫定弁法を公布――河北省では、2016年7月1日より水資源税の徴収試行を開始
  • 中国、「浙江省水十条」が発表される
  • 中国天津市、水関連企業の排出基準適合に関する厳格な特別検査を実施――違法排出行為の取り締まりを強化
  • 中国山東省、特別整理行動を展開して汚染排出費の徴収管理を強化へ
  • 中国、水汚染防止法(改正草案)を公表――改正の重点として水質汚染物排出基準体系の革新や情報公開および公衆参加について盛り込む
  • 中国、三級水生態環境区分管理体系を構築――343規制地域を確定
  • 台湾、「水利法」を改正――用水管理を強化し、水利権登録の免除範囲を改正
  • インドネシア・ジャカルタ、下水処理の普及に向けて68兆ルピアの投資を海外事業者に呼びかける――フランス、日本、インドなどの企業が関心を寄せる
  • タイ、工場敷地内における土壌及び地下水の汚染管理に関する省令を公布――12種の特定事業者に土壌・地下水の調査を要求
  • タイ、工業排水基準を20年ぶりに全面改正
  • フィリピン、水質基準値および排水基準値を定める行政命令を制定
  • マレーシア、節水性能を示す水効率ラベルに関するガイドラインの改定第6版を公開
  • インド南西部のパラッカドでPepsiCoの水過剰採取が問題に
  • インド、国内の深刻な干ばつを背景として再生水市場は将来的に170億ドル規模に
  • インドが国民の「生存のための水」を得る権利を保証する法案を含む水関連法案2件を発表