第60号(2016年11月発行) – バラスト水処理に関する各国の政策、規制

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EnviX「水ビジネス・ジャーナル」60号(2016年11月発行)の目次と主要トピックをお伝えします。

はじめに

2004年に採択されました「船舶のバラスト水及び沈殿物の制御及び管理のための国際条約*1」(以下、バラスト水管理条約)ですが、2016年9月8日にフィンランドが同条約を締結したことで締結国数52か国、合計商船船腹量35.14%となり、発効要件*2を満たし、201798日に発効することとなりました。バラスト水管理条約の目的は、船舶中のバラスト水による海洋環境の悪化を防ぐことですが、これは海外の積荷港においてバラスト水を排出することで、本来ならばその国にない外来種などが流入し、生態系の破壊に繋がる可能性があるためです。このような問題を回避するために、バラスト水管理条約では主には次のような要件を規定しております。

  • 生物数、細菌数が基準値を超えるバラスト水の船舶からの排出禁止
  • 上記の基準を満たすために、船舶にバラスト水処理設備の設置
  • 船舶への、バラスト水の管理方法を定めたマニュアルの設置、およびバラスト水管理責任者の選任
  • バラスト水管理の記録
  • 寄港国検査(PSC:Port State Contorl)

また、バラスト水排出に関する具体的な基準値は以下の通りです。

対象生物 排出濃度(生存個数)
50 µm以上の生物(主として動物プランクトン) 10個/m3未満
10~50 µmの生物(主として植物プランクトン) 10個/ml未満
細菌 病毒性コレラ(O1およびO139) 1 cfu/100 ml未満
又は、動物プランクトン1 g当たり1cfu未満
大腸菌 250 cfu/100 ml未満
腸球菌 100 cfu/100 ml未満

さて、上で挙げたバラスト水管理条約の要件にもあるように、処理設備が義務化されることで同分野の市場が成長していくものと見込まれ、多くの企業が積極的な姿勢を見せております。例えば米国Evoqua社(元はドイツSciemensの水処理部門。2013年にプライベート・エクイティのAEA Investorsが6億4000万ユーロで買収)は、同じく米国のDrew Marine社と提携し、両社で協力してEvoquaの「SeaCUREバラスト水管理システム(BWMS)」の営業をおこなっていくと2015年に発表しました*3。また世界的な水プレーヤーであるSuezは、韓国NK社と5年間にわたる提携契約を結び、双方が有する技術的専門能力を基盤として、バラスト水処理技術の研究・開発を進めていくとのことです*4。一部の報道*5によると、2019年までに6万8900隻の商船にバラスト水処理装置が義務付けられ、800億ドル規模の市場が生まれると言われており、同市場は今後急速に拡大していくことが期待されています。

このEWBJでも引き続き、バラスト水処理に関する各国の政策、規制はもちろんのこと、海外企業の動向についても報告していきます。

そのほか、今号の特集では、「米国の水不足に伴う今後の成長が期待される水ビジネス(3) 節水技術」と題して、漏水管理などをはじめとした米国での節水市場に関する最新情報を概説しております。

さらに、今回の中国水市場コラムでは「中国の智慧水務の発展状況と展望」と題して、中国国内でのスマートウォーターに関する最近の各種政策と水企業への影響をまとめました。

*1 バラスト水管理条約の本文は以下のURLより閲覧可能。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000032152.pdf (英語)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000032151.pdf (日本語)

*2 バラスト水管理条約の発効要件は以下の通り;
「30か国以上の締結、且つ、その合計商船船腹量が世界全体の35%以上となった日の12カ月後」

*3 EWBJ57号に関連記事あり「Evoqua、バラスト水管理でDrew Marineと提携

*4 EWBJ60号に関連記事あり「Suez、韓国NK社とバラスト水処理に関する5カ年パートナーシップ契約を締結

*5 http://japanese.joins.com/article/486/177486.html

 

巻頭トピック

  • GE、水処理事業の売却を検討
  • Pentair、バルブ・制御事業を31億5000万ドルでEmerson社に売却
  • LG、グループ全体での水ビジネスへの積極展開を表明
  • Pacific Institute、米加州における造水及び節水対策コスト比較レポートを公表
  • 中国、汚泥資源化を推進、2020年までに大都市における汚泥の無害化処理率は90%以上達成へ

特集

米国:水不足に伴う今後の成長が期待される水ビジネス(3) 節水技術

中国水市場コラム

中国の智慧水務の発展状況と展望

主要プレーヤーの動向

Veolia Water

  • Veolia(2016年9月~11月の主な動向)
  • Veoliaドイツ、水・エネルギー・廃棄物分野を統合した初の持続可能性報告書を発行
  • Veolia社とフランス首都圏水道組合、水サービスのための統合管理センターServOを開設

Suez Environment

  • Suez(2016年9月~11月の主な動向)
  • Suez、廃棄物からのバイオガス回収技術に特化したPRODEVAL社の株式22%を取得
  • Suez、韓国NK社とバラスト水処理に関する5カ年パートナーシップ契約を締結

GE

  • GE(2016年9月~11月の主な動向)
  • GEとHayward Gordon、嫌気性消化用ノズル式ミキシング・システムの北米での販売で提携

研究開発動向

  • 自己組織化するアルミ・ナノ粒子膜で高効率可搬淡水化装置を実現

注目企業の戦略動向

  • Acciona社、ペルーのリマ市の水道網のメンテナンスに最新IT技術を適用
  • Aqualia、SEAT社とともにスペインでバイオガス自動車のプロジェクトを立ち上げる
  • Evoqua、産業廃水ソリューションのEnvironmental Treatment Systemsを買収
  • 米Gradiant社、中国の工業排水処理市場に参入――すでに6つのブライン濃縮プロジェクトを進行中
  • ドイツのMICRODYN-NADIR、特殊膜のTriSepを買収
  • 廃水処理のNexom、濾過技術のBlue Water Technologies買収で成長を加速
  • TaKaDu、チリの水道ユーティリティEssbioからクラウド・ベースの漏水対策ソリューションを受注
  • 韓国Techcross社、バラスト水処理市場への更なる展開を図るためにマレーシア企業と提携
  • Xylem、オゾン技術をチューリッヒの下水処理プラントに提供――スイスの微量汚染物質除去新規制に対応
  • XylemとKey Equipment Finance、水道ユーティリティへの資金提供で提携
  • Xylem、シンガポールのスマートウォーター・アナリティクス企業Visentiを買収

地域別の市場・政策・規制動向

欧州

  • 欧州委員会、地中海沿岸諸国の水不足解消に向けた研究事業PRIMA へのEUの参加を提案
  • 欧州委員会、灌漑と地下放水用の再生水の水質基準作りに向けて意見募集開始
  • アイルランド、国家下水汚泥管理計画を発表――全国的に下水汚泥管理プロセスを標準化
  • スウェーデン、2種類のBPAを含むエポキシ樹脂を給水配管に使うことを禁止

米州

  • 世界の水ストレスに米主導で対処すべき――米の官民共同の報告書
  • 米国・加州、直接飲用再生水規制の実施可能性に関する報告書ドラフトを公開
  • 米でPFOA・PFOSによる水道水汚染をめぐる訴訟――Daikinは和解、3Mは今後も争う構え
  • 米ジョージア州のHonda部品工場、廃水再利用プロセスを導入
  • 米EPA、飲料水中過塩素酸塩の規制の日程決まる――2019年12月19日までに最終規則化
  • 米EPA、大規模な水インフラ・プログラム創設のための規則制定へ
  • スペイン水研究所IMDEA、ラ米の都市の多くが上下水サービスの課題を抱えていると説明
  • メキシコシティの上下水サービスの質改善と排水設備拡充には、今後25年間で2000億ペソの投資が必要
  • パナマ政府、2015-2050年水確保国家計画を承認
  • ペルー・リマ市の上下水道局、2021年までに上下水道整備に50億米ドル投資すると発表
  • ブラジル政府、上下水サービス会社の投資を奨励する為の税優遇措置を規定する法令を公布
  • ブラジルのテメル大統領、3つの州の上下水サービス公社の民営化を発表
  • チリ、新しい水源としての排水の再利用により、GDPが13%押し上げられ、8万3000人の雇用が創設されるという調査書を発表

アジア

  • 中国、水汚染防止重点産業クリーン生産技術推進方案を公布――資金援助などにより11重点産業におけるクリーン生産技術の普及を促進
  • 中国、第13次5カ年期間における重点流域水環境総合管理建設計画を発表
  • 中国、水利用効率ラベル管理弁法について意見募集を実施――水を使用する製品の水利用効率レベルなどの性能を表示
  • 中国天津市、改正された汚水総合排出の強制標凖について意見を募集
  • 中国・海綿都市開発事業の現状
  • 中国広東省、8箇所の汚水処理場建設を含む「2016年広東省水汚染防止業務計画」を公表
  • 中国、「水汚染防止法(改正草案)」をほぼ原案通り可決、汚染物質排出証の発行範囲を拡大へ
  • 台湾・鳳山溪再生水工場のBTO計画が正式に締結――再生水量は1日当たり4万5000トンに達する見込み
  • 台湾環保署、「水汚染防止措置計画および許可申請審査管理弁法」を改正
  • フィリピン内務自治省、最大1億ペソ程度の小規模PPPを導入へ
  • ベトナム、2016年-2020年の上下水プロジェクトに100億ドルが必要に
  • ベトナムのダナン、適正な廃水処理の実現にむけてPPPを視野に入れる
  • インド・デリー、2017年までに全ての市民に水道水の提供を予定
  • インド、繊維業を対象とした新たな排水基準を施行――廃液排出ゼロ(ZLD)技術の義務化は見送り