第63号(2017年8月発行) – 各国の水質汚染問題に潜むビジネス機会

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EnviX「水ビジネス・ジャーナル」63号(2017年8月発行)の目次と主要トピックをお伝えします。

はじめに

水質汚染は、環境問題のなかでも特に注目を集める分野です。日本で最も知られている公害病のひとつである水俣病も、水俣湾に排出されていた工場の廃液の中に含まれるメチル水銀が原因となり、あのような甚大な被害へと繋がりました(なお、ご存知の方も多いように、この水俣病をうけて世界的に水銀を規制する動きが高まり、「水銀に関する水俣条約」と名付けられた国際条約が2017年8月19日に発効しました)。海外でも水質汚染問題は頻発しておりますが、そのなかでも近年の特に大きな事故としては、ベトナムで起きた台湾企業のフォルモサの廃水による魚の大量死事故があります。これは2016年4月に発生したもので、ベトナム北中部地方のハティン省などで沿岸200 kmにわたり大量の魚が死に、その死骸が浜辺に流れ着き、同国内で大きな話題を集めた汚染事故です。ベトナム当局は、調査の結果、フォルモサの廃水中に含まれていたフェノールやシアン化物が基準を超過していたことが原因と結論づけ、また、フォルモサ側も賠償金として5億ドルの支払いを発表しました。

いっぽう、特に先進国で近年問題となっているものとして、有機フッ素化合物による環境汚染があります。様々な製品(フライパンやアウトドア用品など)の表面コーティング剤や撥水剤として使用されている、有機フッ素化合物の一種であるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)およびPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、現在多くの国・地域で規制が始まっており、直近ではEUのREACH規則の改正でPFOAが規制対象物質に新たに加えられました(2017年6月13日)。


図 PFOSとPFOAの構造式
(出典:環境省、国内等の動向について(PFOS))

PFOSやPFOAについては、人体への影響はまだ明確にはなっておりませんが、難分解性や高蓄積性といった観点から水環境の汚染が懸念されています。例えばアメリカでは、環境NGOと大学による調査の結果、全米27州で1500万人が利用する水道水が有機フッ素化合物で汚染されていることが分かりました[1]。また、PFOAの代替物質である“GenX”についても、河川の汚染が懸念されております[2]。GenXを使用しているアメリカのChemours社は、その安全性を主張していますが、米EPAは毒性データを見直し、リスク評価を更新することを発表しました。

このような水質汚染は世界各地で問題になっていますが、それらの解決に向けては様々なビジネスチャンスが期待されます。例えば、上述のPFOAの問題について、ノースウエスタン大学の研究チームが、飲用水に含有するPFOAを除去する低廉且つ再生可能なβ-Cyclodextrinポリマーの開発に成功したと学術論文で発表しました[3]。同材料は、水中のPFOA濃度を1 μg/Lから10 ng/L未満に減少させることができるといいます。今回開発されたポリマーは現在、研究チームを率いるDichtel教授が創設したCycloPureにて商業化が進められているとのことで、今後の動向が注目されます。このほかには、アメリカの水企業Xylemがスイス最大の下水処理場に納入したオゾン処理システムも同様の事例のひとつです。これは、微量汚染物質(工業化学品、医薬品・パーソナルケア用品(PPCPs)、駆除剤、ホルモン剤など)に対処するべくスイス政府が定めた新たな規制に対応するためのもので、そのニーズに関しては更なる拡大が見込まれます。

水の汚染問題の背景にある原因は各地で異なりますが、それらを丁寧に調べることで、現地のニーズに即したチャンスが見えてくるかもしれません。このEWBJでは引き続き、世界の水問題、水規制、そして企業の動向を報告していきます。

その他、今回の中国水市場コラムでは「中国水処理分野におけるPPP方式の応用状況と発展方向」と題して、水事業でのPPPに関する政策および最新動向をまとめました。

[1] EWBJ63号に関連記事あり「米27州の水道水、有機フッ素化合物で汚染」

[2] EWBJ63号に関連記事あり「米でPFOAの代替物質GenXが河川を汚染」

[3] EWBJ63号に関連記事あり「飲用水からPFOAを除去する新材料の開発」

巻頭トピック

  • Ranhill社、東南アジア地域での水事業拡大を目論む
  • Evoqua、あいつぐ企業買収で技術力強化
  • 中国で初の電子ビーム照射による廃水処理プラント
  • ベトナム・ハノイ市、2020年までに水道普及率100%を目標に
  • 南ア・ケープタウン、深刻な水不足を受け8月末までに仮設の淡水化プラントを設置、操業開始目指す

中国水市場コラム

中国水処理分野におけるPPP方式の応用状況と発展方向

主要プレーヤーの動向

Veolia Water

  • Veolia Water(2017年6月~8月の主な動向)

Suez Environment

  • Suez Environment(2017年6月~8月の主な動向)

GE

  • GE(2017年6月~8月の主な動向)

研究開発動向

  • 飲用水からPFOAを除去する新材料の開発
  • 直接太陽光淡水化によるモジュール化オフグリッド水処理
  • 膜のバイオファウリングの研究に新たな進展

注目企業の戦略動向

  • ABB、フィリピンでの水ビジネスを強化
  • Arvind Envisol社、エチオピアの工業団地へのZLD技術の導入に向けて同国政府と提携
  • Coldharbour、バラスト水処理システムの提供に向けてSembcorp Marineと契約締結
  • Itron、IoTソリューションによる水道改善プロジェクトをトンガで展開
  • Kemira、フィンランドのスタートアップAqsens社より液体分析技術を買収
  • Mueller SystemsとSenet、北米での水道インフラへのIoTサービス展開で提携
  • 中国SunRui社のバラスト水処理システム、アジア初となるUSCG認証を取得

地域別の市場・政策・規制動向

国際

  • 未処理排水の農業利用による健康被害のリスクが懸念

欧州

  • 欧州委員会、海へのマイクロプラスチック排出を減らす政策案示し、意見公募開始
  • ヨーロッパの水道事業者ら、硝酸肥料使用制限の厳格化などを要求
  • ドイツ官民産業界連合、河川水域への微量物質を大幅削減する戦略を議会に勧告
  • 仏ANSES、スマートメーターが発する電磁波の健康影響に関する評価報告書を改訂

米州

  • 米27州の水道水、有機フッ素化合物で汚染
  • PVCPA、米国上下水道配管の環境影響・コストを分析
  • 米国で雨水利用の企業にストームウォーター処理料金とエネルギー使用量の削減効果をもたらす
  • 米でPFOAの代替物質GenXが河川を汚染
  • 米の環境団体、PVCなどによる水質汚染でFormosa Plasticsを提訴
  • 米EPA、アラスカの自動車廃液投棄井に閉鎖命令
  • メキシコ上院議員、環境省と国家水管理庁に工業排水基準の見直しを要請
  • メキシコ水技術庁、水資源の現状と将来の見通しを分析する「メキシコのウォーター・フットプリント」を発表
  • メキシコ連邦環境監査局が河川への排水を調査、無許可による汚水排出に停止を命令
  • エルサルバドルで野党が提出した水法案に対し、水の民営化につながると与党が反対
  • ペルー政府、水インフラ投資基金法規則を公布し、基金の運用を始める
  • コロンビア住宅相、都市部のアクセス困難な地区の水インフラを改善する為の政令を公布すると発表
  • コロンビア住宅省、上下水インフラの設計、建設、運営、メンテナンスの技術規則を公布
  • ブラジル下院委員会、家電の水消費効率ラベル法案を承認
  • チリ環境省、地下水への汚水排出規則適用のための技術指針を公布
  • BHPビリトン社、チリ北部の銅鉱山での第2淡水化プラント稼動開始により、地表水の水使用を11年間半分に減らすと発表
  • アルゼンチン公共事業・住宅省副大臣、水道普及100%、下水普及75%を目指し、440億米ドルの投資を要する「国家水計画」の開始を発表

アジア

  • 中国上海市、「第13次5カ年計画」期間の水資源消費総量と消費強度の規制を強化――地下水採取量は年間500万m3以下へ
  • 南オーストラリア州の雨水利用技術、中国で大きな需要
  • 中国、約半数の省が十二五期間での水質改善目標を達成できず
  • 中国環境保護部、「人体健康水質基準制定技術ガイドライン」を公布、「環境・健康」の関連標準を正式に環境保護標準体系に取り込む
  • 中国、水汚染防止法を改正、2018年1月より施行へ
  • 中国水利部、「2016年中国水資源公報」を発表――用水効率の向上および水質の改善といった傾向
  • 中国広東省で大気及び水質汚染防止の特別検査を開始
  • 中国、「2016年全国海水利用報告」を発表
  • 台湾経済部水利署、「節水ラベル管理弁法」を公布――節水ラベル使用許可証の発給条件や有効期間などを規定
  • タイ、工場法に基づく新たな排水基準を公布――2016年に公布された国家環境保全推進法に基づく基準に倣って
  • タイ、工業団地公社法に基づく新たな排水基準を公布――工業団地が運営する中央排水処理施設への流入水質基準を規定
  • フィリピン、水不足対策として雨水の収集を推進へ
  • ベトナム、排水基準違反で韓国の電子部品メーカーに2億ドンの罰金
  • ベトナム・ドンナイ省、工場排水自動監視ステーションを未設置の企業に対して生産停止処分を予定
  • ベトナム・ハノイ、工業排水の環境保護費の徴収状況を強化する文書を公布
  • ベトナムの下水処理、民間の投資が必要
  • ベトナムの水処理ニーズに韓国企業が意欲
  • マレーシア、大型下水処理施設を開設――水資源保護のために産業廃水の責任ある処理を要求
  • マレーシア、未処理廃水によって河川を汚染したとして養豚場が閉鎖処分をうける
  • インドの石炭火力、下水の使用は渇水の根本対策にならず――グリーンピース・インドの報告書

その他

  • オマーン、RO膜を使った淡水化の拡大を予測