世界最大の民間自然保護団体、世界自然保護基金(WWF)が2008年8月20日、報告書『英国の水の足跡―英国の食料と繊維の消費が世界の水資源に与える影響』(以下のリンク)を発表、「英国の最大手企業は、自社の水利用状況を評価し、持続可能な水利用を普及することで水使用量を削減してもらいたい」と要請した。
http://www.wwf.org.uk/filelibrary/pdf/water_footprint_uk.pdf
報告書のあらましは次のとおりである。
(1) 英国で使用されている水使用量全体のうち、自国の河川、湖、地下水から取水しているものは、わずか38%にすぎない。それ以外の62%は、世界中の国の水塊から来ている。その中には、水資源に限りある地域のものもある。
(2) 農業用水をベースに計算すると、英国は世界第6番目の「バーチャル・ウォーター(仮想水)」消費大国にランクされる。自分の食べる食料や着る服を生産するのに世界のどこかで使われているバーチャル・ウォーターの純輸入量という点から計算すると、英国は、ブラジル、メキシコ、日本、中国、イタリアに次ぐ多さである。
(3) 平均的な英国人は、一人あたり1日に約150リットルの水を直接使っている。しかし、英国人の使っているバーチャル・ウォーターの量は、毎日4,645リットルであり、直接使用量のおよそ30倍にも達している。
(4) その意味で、蛇口をひねって直接使う水と、生産品の供給チェーンで使われる水の両面から、最大手の英国企業は水使用量を減らしてほしい。民間部門の果たす役割は非常に大きい。民間部門は、政府や自治体とともに水管理の改善を支援していくことができる。
(5) 一般の消費者も、スーパーなどの事業者に、供給チェーンに沿って適切な水管理を行っているかどうかをただすことができる。
仮想水(バーチャル・ウォーター)とは
食料の輸入国(消費国)で、もしその輸入食料を国内で生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推計したもの。たとえば、日本は多くの農産物を輸入しているが、輸出国では栽培のために水が消費されており、それをかりに国内で栽培しようとすると多くの水、すなわち仮想水が必要となる。農産物の輸入によって日本が節約できたこの水資源を「仮想水」という。ロンドン大学のアラン教授によって1990年代初頭に提唱された。