タイ関連法令:
- 水資源管理の現状(本ページ)
- 主要法規制の概要
- 水質に関する環境基準
- 産業排水基準
- タイの水市場動向
経済成長を続けるタイでは、廃水の垂れ流しによる河川や運河、沿岸海域の汚染、あるいは地下水の汚染、過剰採取など、様々な水環境問題が起こっている。
タイでは、2009年、48の主要河川および4の湖沼に設置された368ヶ所のステーションにて、水質汚染状況のモニタリングが行われており、31%が良好(クラス2;この分類は、後述する表流水の環境基準における分類に同じ)、36%はまずまず(クラス3)、33%は悪化(クラス4)との結果が出ている。モニタリングの結果を見ると、2007年以降、総じて河川や湖沼の水質汚染状況は改善されつつある。ただし、汚染状況が改善した場所もある一方、悪化している地域もあり、また、雨季と乾季でもしばしば汚染状況に違いが出ている(総じて、雨季の方が乾季より水質が良好な傾向にある)。汚染の主要な原因は、処理されずに垂れ流される生活排水や工業廃水、農業廃水であり、同国では節水や水の再利用によって廃水量を減らすことの必要性が指摘されている。また、地方自治体には共同下水処理システムを設置して、適切に運営管理することが求められており、加えて、企業には環境に優しい生産システムを導入することが奨励されている。
南東にタイランド湾、西にアンダマン海を擁するタイでは、240のステーションで沿岸海域の水質モニタリングも行われている。2009年におけるモニタリングの結果を見ると、極めて良好、良好、まずまず、汚染、深刻な汚染と結論付けられた割合が、それぞれ5%、51%、34%、5%、5%となっている。2007年から2009年の傾向を見ると、特にタイランド湾を中心に、汚染が進行しつつあることがわかり、この原因は主要河川から廃棄物や汚染物質等が流れ込んでいることとみられている。
地下水資源の管理も重要な課題である。タイでは、工場や廃棄物処分場などの周辺地域にて、水銀や六価クロム、揮発性有機化合物(VOCs)といった有害物質が検出されており、周辺住民に悪影響を与えている。公害訴訟が起こったマプタプット工業団地では、地下水モニタリング用の井戸が32ヶ所に計61本設けられ、水質モニタリングが行われている。
水質汚染の防止に向けて、公害管理局(PCD)は、排水違反の取り締まりを行っている。チャオプラヤ川やバーンパコン川、ターチン川などの流域では施設や養豚場等を対象に検査が行われ、違反者には行政命令が出されている。2009年には、チャオプラヤ川流域で82ヶ所に行政命令が出され、うち51ヶ所を再調査した結果、17ヶ所(33%)が指導に従い、法令順守あるいは排水停止等の策を講じたことが判明している。また、同2009年には、バーンパコン川、ターチン川流域でもそれぞれ82ヶ所、23ヶ所に対して、行政命令が出されている。排水の検査は工業団地でも行われており、2009年には18の工業団地において排水の検査が行われ、6ヶ所で基準を超える違法排水が見つかっている。違反事例に対しては、公害管理局(環境天然資源省)や工場事業局(工業省)、地方の関連当局等が連携して対策を講じている。