米国の水インフラ・フォーラムで、修理・再建のための資金手当ての要望あいつぐ

アメリカ商工会議所の主催で2008年7月28日に連邦議会を会場に開催されたフォーラム――Water Infrastructure: Why Congressional Action is Urgently Needed(水インフラ:なぜ議会の行動がただちに必要か)――で、連邦、州、および市町村の代表らが、水管理と配水システムの修理・再建のために各自治体が資金を調達しやすくする「持続可能な水インフラ法案」(H.R. 6194)の成立を議会につよく求めた。

フォーラムの参加者らは、アメリカの水インフラは崩壊しつつあり、毎年1兆7000億ガロンの水が漏洩により失われていると訴えた。さらに、アメリカ土木学会がアメリカの水インフラをDマイナスに格付けしていること、また、気候変動により嵐の回数や強さが増すほか、海面が上昇し、それにつれて事態はいっそう深刻さを増す傾向にあることを彼らは指摘した。

 

問題の解決には多大な費用がかかるが、解決をより困難にしているのが自治体による費用負担の割合がきわめて大きいことである。下水道プロジェクトの場合、総費用の95%を自治体が負担することになっており、上水道インフラにいたっては、総費用の99%が自治体負担となる。

 

Bill Pascrell議員(民主党、ニュージャージー州選出)とPhil English議員(共和党、ペンシルヴェニア州選出)が下院に提案したH.R. 6194法案は、私的活動債――債券発行収入の10%超が、政府機関以外のために使われる地方債――の上限を撤廃するよう国の税法を改めるという内容で、この法案の支持者たちは、これが成立すれば官民協力が進み、水インフラに資金が流れてきやすくなると考えている。法案は2008年6月5日に上程され、現在、下院歳入委員会で審議中である。

 

2002年に環境保護庁(EPA)がアメリカの水インフラについて行なった調査では、2020年までに全米の水道管のおよそ半分が、劣っているか、きわめて劣っているか、あるいは「使用期限が過ぎた」状態におちいることがわかっている。また、2008年1月に公表された同じくEPAの調査では、下水道ユーティリティは今後20年間に、下水の集水・処理システムを交換、修復、拡張、または改善するために2025億ドル(約22兆1900億円)を必要とすることが予測されている。

 

アメリカの水インフラの多くは設置されてから50年以上経過しており、いまちょうど、交換の時代にはいっているといえる。そのため、莫大な資金が必要になっているわけだが、問題の改善策を地方債などによる資金調達だけに求めるのではなく、節水や、費用に見合った水道料金の見直しなども必要だとの声もあがっている。