米国テキサス州オースティンにあるテキサス大学の化学工学の教授は、淡水化プロセスを簡素化し、淡水を利用できる場所を増やし、温室効果ガスも減らしうると考えられる塩素耐性のある脱塩膜を開発したチームの一員である。「より優れた脱塩膜で淡水化プロセスを効率化すれば、1ガロンの水を淡水化する費用はよりやすくなるだろう」とBenny Freeman教授は述べた。同教授は、Kenneth A. Kobe化学工学教授職とPaul D. & Berry Robertson Meek and American Petrofina Foundation Centennial(100周年)化学工学教授職を持っている。
Freeman教授は、3年以上にわたって主にバージニア工科大学のJames E. McGrath氏と韓国のウルサン大学のHo Bum Park氏と協力してスルホン化コポリマーで作られた塩素耐性脱塩膜を開発し、特許を申請した。
現在淡水化に使われている塩素殺菌水に耐性のないポリアミド膜の場合、生物膜(原水中の生物的汚染物質から生じるものである)がこの膜上に生じるのを防ぐために塩素を加えて原水を殺菌しなければならないが、このことで膜の性能が下がる。塩素殺菌の後、塩素を除去してから原水の淡水化を行なっている。
「新しい脱塩膜は、水中の塩素による攻撃から膜を守るために現在必要な塩素除去処理をしないですむ見込みがある。効率の微増でも大幅なコスト削減が得られると考えられる」とFreeman教授は述べた。
この開発はまた、地球温暖化問題の原因である二酸化炭素の排出の削減に直接影響することもありうる。
Freeman教授は、「エネルギーと水とは本質的に関係がある。発電するのに水が必要であり(発電所の冷却水)、純水を作り出すには水から塩を分離するためにエネルギーが必要である。そのエネルギーは、必然的に二酸化炭素の発生をもたらす化石燃料の燃焼によって生み出されることが多い。したがって、たとえば、われわれが取り組んでいるようなよりよい脱塩膜を開発して淡水化のエネルギー効率をもっとよくすることができれば、純水を作り出すのに必要なカーボン・フットプリント(二酸化炭素排出量)を減らすことができるのではないだろうか」と述べた。
Freeman教授は、McGrath氏の研究チームは、目下淡水化に使われている脱塩膜とは全く異なった基盤に基づいて新しい種類の材料を開発したと述べた。これらの新しい材料は、水溶性塩素に極めて耐性があるので、塩素が存在していても性能が低下しない。
「要するに、McGrath博士は、商業ベースで利用されている脱塩膜と比べて、脱塩膜の化学組成を根本的に変えたので、新しい脱塩膜には塩素による攻撃に反応する化学結合がない」とFreeman教授は述べた。
海軍研究事務所(Office of Naval Research)と全米科学財団イノベーション・プログラム・パートナーシップ(National Science Foundation Partnerships for Innovation Program)が、この研究のための資金を提供した。