米下院で、有害藻類の異常繁殖の脅威に関する研究が必要との指摘

2008年7月10日下院の小委員会において、参考人は、魚類を殺し、人の健康に危険をもたらす有害な藻類のブルーム(異常繁殖)(HAB: harmful algal bloom)からの増大する脅威を食い止めるために継続的な研究と人的・物的資源が必要であると述べた。

下院の科学・技術委員会のエネルギー・環境小委員会は、HABを防ぎ、抑えるための研究と選択肢について検討するための聴聞会を開いた。

HABは、日本では呈する色によって赤潮や青潮などと呼ばれているが、植物や動物に悪影響を与える毒素を出すものであり、この毒素は魚介類の体内に蓄積される。

聴聞会で参考人は、過去10年間にこの問題に対応する研究やプログラムはかなり進展したにもかかわらず環境保護の課題は増大していると述べた。

2007年9月に発表された省庁間共同報告(interagency report)には、HABは、その発生頻度が増えており、今や米国のすべての沿岸州に影響を与えていることが示されている。

この聴聞会における3人の参考人のコメントの要点は、次の通り。

 

(1) 《Donald Anderson氏、ウッズホール海洋学研究所(Woods Hole Oceanographic Institution)の上席科学者かつ米国海洋生物毒素・有害藻類ブルーム局(U.S. Office for Marine Biotoxins and Harmful Algal Blooms)の局長》

30~40年前には問題は散在していたし、散発的であったものが、今や事実上すべての沿岸州は有害な藻類種に脅かされている。HABの発生数、それによる経済的損失、影響を受ける資源の種類そして毒素と有毒種の数は劇的に増えた。

現在のプログラムは、「有害藻類の研究と対応:国家環境科学戦略(Harmful Algal Research and Response: A National Environmental Science Strategy 2005-2015)」と呼ばれる新しい国家的計画の数多くの勧告に十分に対応していないので、新しいプログラムを策定し、現在のプログラムを修正する必要がある。

五大湖を除いて、現在のプログラムは、問題に総合的に対処できていないので、HABの影響を受けている淡水系水域に対応する別の法律や資金調達イニシアチブが求められる。

 

(2) 《H. Kenneth Hudnell:SolarBee Inc.の副社長かつ科学部長、23年間環境保護庁(EPA)の国立保健環境影響研究所で神経毒物学者として勤めた》

環境保護庁(EPA)の管轄である淡水から米国海洋大気局(NOAA)の管轄である大洋までのHABに包括的に対処する改良された法律が必要である。

米国の淡水系のHABは、主に工業用化学薬品より強力な毒素を出す藍藻類によって起こされているが、五大湖以外に淡水系のHABに対処するための国家的研究計画は実施されていない。また、米国の飲料水あるいはレクリエーション用水域中のHABの細胞あるいは毒素に関する連邦政府の指針も規則もない。

 

(3) 《Robert Magnien氏:NOAAのスポンサー付き沿岸海洋研究センター(Center for Sponsored Coastal Ocean Research)長》

気候変動とHABの頻度と危険性を増す他の要因との相互作用の役割は、研究の初期段階の重要な主題であるが、気候変動は、地域によってはHAB問題を悪化させると見込まれている。NOAAの資金で行なわれている研究では、HABとその毒素を検出する新しい方法の開発、監視能力の改善、ブルームの原因と影響の理解、および最悪のブルームの予測について大いに前進した。この研究の長期の目標は、気象予報に似た、実用的なHAB予報の開発である。HAB予報については、すでに実用的なものがフロリダ州で提供されていて、テキサス州とメーン湾(メーン州沖)では予報モデルを試験中であり、またワシントン州の沿岸とエリー湖で今夏の後半に予報モデルの試験が行なわれる予定である。

 

なお、南西フロリダの沿岸地域を代表しているConnie Mack下院議員(共和党)は、HAB研究へのコミットメントを強め、研究費用を獲得するためのプロセスを改善する必要があるとして、「1998年の有害藻類ブルーム・低酸素状態研究管理法(Harmful Algal Bloom and Hypoxia Research and Control Act of 1998)」を改正して再授権させるために2007年2月に「われわれの沿岸を救おう法(Save Our Shores Act)」(H.R. 1091)を提出している。