SUEZ傘下のUnited Waterは、2008年に新規の契約を獲得しなかったにもかかわらず、アウトソーシング受託事業の売上は22%伸び、Veoliaに次いで全米2位となった。
United Waterの売上がこれだけ伸びた大きな要因は、積極的な企業買収にある。ミルウォーキーにおける下水処理の大きな契約を失った穴は、2007年に買収したAquarion Operating Services(AOS)の売上や、2008年夏に買収したEarth Techの北米における受託事業部門(NACO)の約2000万ドルの売上で埋め合わせることができた。
しかし、最も大きかったのは、ジョージア州ペリーのUtility Service Company(USC)の買収である。この会社は、貯水タンクなどの資産管理サービスや、それに関連する水処理ソリューションなどを提供している。
こうした動きについて、United WaterのDan Sugarmanマーケティング・戦略部長はこう述べている。「2008年は新規契約の獲得に全力をそそいでいたわけではなく、わが社のビジネスの総合化をはかる時期だった。しかし、いまやわれわれは総合的なビジネス開発チームをもつにいたった」
USCのビジネス・モデルが通常の運転・保守ビジネスとは明らかに異なることを考えると、はたしてUnited WaterがUSCの売上を受託事業の損益に算入するのは正当化されるのだろうか? これについて、United WaterのPatrick Cairo営業開発担当副社長は明確に「イエス」と答えている。
「われわれは自分たちのビジネスを水のバリュー・チェーン全体にまで広げようとしており、USCのコア・ビジネスである貯水タンクの保守は、水処理プラントの保守に関連した資産管理サービスと相互補完的なものと考えている。つまり、USCのいちばん得意としている分野とわれわれが成長をめざす分野とが一致するわけで、これはシナジーという観点からすばらしいことだと思う」
Cairo副社長は、USCの地域営業ネットワークが、アメリカの南東部や南西部など、成長が見込まれる重要な地域でUnited Waterが受託事業を拡大していく上で新たなチャンスを拓いてくれると考えている。
競合他社と同様、United WaterもDBO部門の市場拡大を大いに歓迎している。これまで、United Waterは親会社による保証の問題が縛りになってDBO市場への参入をある程度阻害されてきたが、いまではこれが変わりつつある。
これについてCairo副社長はこう述べている。「アメリカでのビジネスで前提条件となることがいくつかあるが、そのうちのひとつが、設計・建設(DB)、および運転(O)という契約の違った側面について包括的な保証を要求されることだ。われわれはいま、DBの責任をすべて引き受けてくれるパートナーを得たことで、アメリカの方式が以前よりも受け容れやすくなった」United Waterは、アリゾナ州Pima郡をはじめとする今後の比較的大きなプロジェクトのいくつかについて、すでにこうしたチームの編成を終えており、このような戦略によってDBO市場におけるプレゼンスを高めたいと考えている。
United Waterの獲得契約のポートフォリオが大きくなり、その多様性が増すにつれ、ビジネス全体のリスクも低下していくことは間違いのないことだが、しかし、これはまた、契約更新という点においては、するべきことが増えることを意味している。United Waterは、ニュージャージー州ジャージーシティの10年間1億3000万ドルの契約や、インディアナ州ゲーリーの5400万ドルの下水処理O&M契約など、2008年に25件の契約更新を成功させた。しかし、これらの更新がすべてスムーズに進んだというわけではなかった。
この間の事情について、Cairo副社長はこう語っている。「われわれのポートフォリオには中小規模の地域との契約もあり、そこでは、以前には見られなかった難題も持ち上がっている。われわれが契約更新の交渉をしていると、地元の企業が出てきて、なかなか手強いオファーをしてくる。技術的な要求条件がより複雑になるにつれ、われわれのバリュー・プロポジションの強みが増してくるが、そうした強いバリュー・プロポジションには経費もかかるのだ」
2009年にはNACOとUSCの買収による売上増がまるまる1年分反映されるので、年間売上はさらに伸びるだろう――United Waterは現段階で2009年の売上を約3億5000万ドルと見込んでいる。しかし、この成長をつづけるには、United Waterの事業開発部門は新たなビジネスの創出へ向けて本腰を入れる必要がありそうだ。