フィリピンのマニラ首都圏とその近郊で、エルニーニョ現象による水不足問題が拡大している。マニラ首都圏の水がめであるアンガットダムの水位は、2010年2月26日の時点で193.33メートルと、通常よりも4.65メートル低くなっている。
これを受け2010年2月26日、環境天然資源省(DENR:Department of Environment and Natural Resources)のHoracio C. Ramos大臣は、次の3つの対策を公表した:
- 65か所の地下水井戸の追加利用。マニラ首都圏上下水道庁(MWSS:Metropolitan Manila Waterworks and Sewerage Service)の指揮により、首都圏で水道事業コンセッショネアであるマニラ・ウオーター(MWCI)とマイニラッド・ウオーター・サービシズ(MWSI)の協力を得て実施する。3,500万リットル/日の追加供給が可能。
- MWSIのプタタン浄水場ならびに移動式水処理システムを利用したバエ湖からの取水。約3,500万リットル/日の追加供給が可能。
- 上下水道網の漏水箇所の修繕を通した、無収水(non-revenue-water)削減。2億8700万リットル/日の追加供給が可能。
同時にRamos大臣は、引き続き住民へ節水を心がけるよう呼び掛けるとともに、政府内においても、マイニラッドの無収水削減(8,200万リットル/日)、上記コンセッショネア2社による処理済み下水の再利用(3.900万リットル/日)、マニラ・ウオーターによる水圧管理(1,400万リットル/日)、さらに大統領の行政命令で奨励されている政府機関における10%節水の実施(700万リットル/日)といった、節水を重点においた対策に取り組むことを明らかにした。
事態の深刻さは、政府一丸となった取り組みからも明らかだ。すでにアロヨ大統領は行政命令第278号を発行し、マニラ首都圏に住む約1,500万の住民の健康な暮らしを確保するために、早急に同地域の水不足に対する策を講じるよう全政府関連機関に命じた。
同命令に従って、環境天然資源省(DENR)は傘下の国家水資源評議会(NWRB)を介し、マニラ首都圏上下水道庁(MWSS)ならびに国家灌漑庁(NIA: National Irrigation Authority)に対する水の割当を2010年1月から適宜切り下げていく。農務省(DA)は、アンガット・マッシム灌漑地区(AMRIS)における灌漑用水の利用を最適化するために農作業スケジュールを確定する。フィリピン国家警察(PNP)、地方自治体(LGUs)、公共事業道路省(DPWH)、メトロ首都圏開発局(MMDA)などに対しても、マニラ首都圏上下水道(MWSS)庁ならびにコンセッショネア2社に対する支援体制を整えるためのタスクが割り当てられている。
このほかにも、全政府関連機関に対して、水不足問題責任者の任命、水の保全とアセスメントに関するプログラムの実施、所轄部門における水消費量に関する月例報告書の提出が求められている。