アメリカ地質調査所は2010年5月21日、上水用公共井戸の水質に関する報告書、Quality of Water from Public-Supply Wells in the United States, 1993-2007(アメリカにおける公共給水井戸の水質、1993~2007)を公表した。それによると、それら井戸から得た浄水処理前の水の20%以上で、規制されているものもいないものも含め、きわめて広範な汚染物質が「健康上の潜在的リスクが懸念される」濃度で存在することがわかった。
これについて地質調査所で水部門を統括するMatthew C. Larsen部長は、報告書とともに発表された声明文のなかでこう述べている。「地質調査所のこの調査は、まず原水の水質に焦点を絞ることによって、また飲料水では規制の対象となっていない多くの汚染物質も対象とすることによって、規制目的や遵守目的で日常的におこなわれている公共上水道システムの広範なモニタリングを補完している」
報告書は、汚染濃度がある種の健康基準を上回ったもののうち、約4分の3はラドンやヒ素など、自然界にもともと存在する汚染物質によるものであることを明らかにしている。ここで使われた健康基準は、環境保護庁(EPA)が定めた最大汚染濃度か、あるいは規制対象外の物質については、地質調査所がEPAなどと協力して定めた健康ベースのスクリーニング濃度である。
地質調査所による調査では、主要な30の帯水層から水を得ている932の公共井戸の未処理水を検査した。その結果、すくなくともひとつの原水サンプルで基準レベルを上回っている汚染物質が23種類あった。そのうち10種類は、サンプルのすくなくとも1%で基準レベルを上回って検出されており、潜在的に憂慮すべき汚染レベルのほとんどはそれら物質によるものだった。
これら10種類の汚染物質は、検出頻度の高い順に、ラドン、ラジウム、ヒ素、全アルファ粒子放射能、マンガン、ストロンチウム、ホウ素、ディルドリン、硝酸塩、およびパークロロエチレンである。このうち最後の3つだけは人工のものであり、また、ディルドリンはもはや使用されていない。
この報告書についてEPAのMichael Shapiro上下水道・水環境局長は2010年5月21日のブリーフィングで、地質調査所の調査はEPAが水質を評価し、規制のありかたを決める上での重要な情報源であると述べた。
同局長はまた、EPAが汚染物質の規制を決定する際に基本ファクターとなるのがその汚染物質の出現頻度であり、地質調査所の調査で上位10位内にあったストロンチウムは最新のEPAの汚染物質候補リストにもはいっていることを指摘した。