大きな潜在力を秘めるラテンアメリカの水・廃棄物処理ビジネス

ラテンアメリカでは、過密する大都市圏ならびに農村部における飲料水供給と排水処理が大きな課題となっている。国連は、2015年までにラテンアメリカ住民の82%に上下水道網へのアクセスを確保するという目標を掲げている。同地域における水ビジネスの開発は、住民の生活の質を向上させるためだけでなく、産業・採鉱・農業などの長期的発展においても重要な意味を持っている。

降雨が不安定である上に、地域によって降雨量の差が激しいために、2008年にはチリで、また2009年にはベネズエラで大規模な干ばつ被害が出ている。一方、堰堤の未整備ゆえ、雨水を利用せずにそのまま海へ流している地域もある。

例えばペルー。アマゾンとその支流という巨大な水源を有しながら、国土を南北に貫くアンデス山脈に遮られているため、トンネル建設なしには水源到達は不可能だ。首都リマ市では水需要の増加に伴い、約6億ドル(約560億円)を投じて首都圏の新規水資源としてアンデス山脈東側に位置するアマゾン川最上流から導水を行うプロジェクトMarca IIのほか、2億8000万ドル(約262億円)規模の淡水化処理施設建設計画も持ち上がっている。

同地域における鉱業・加工業においても充分な水供給が不可欠だ。金属鉱物資源の多くはアンデス高地やアタカマ砂漠といった自然環境の厳しい地域に埋蔵されており、これらの開発に必要な水供給・水処理には莫大な投資と大胆なソリューションが必要とされる。例えば世界最大の鉱業会社BHP Billiton社は、チリのLa Escondida鉱山開発用に海水淡水化施設を建設している。

もうひとつのキー・ポイントは、ラテンアメリカ農業における水需要の増加である。国連食糧農業機関「AQUASTAT」のデータによると、現在、同地では使用可能な水量の約73%が農業利用されている。ラテンアメリカの多くの国では、対アジアをはじめとする国際取引の強化、さらにバイオ燃料を通したエネルギー資源の多様化をねらって農業に力を入れようとしている。

廃棄物処理の重要性も今後ますます高まるであろう。過去30年間で住民一人当たりの廃棄物排出量は倍増しており、埋立処分場の拡張工事がそれに追いつかない状況だ。コロンビアを例にとると、世界銀行の報告では2012年末までに10件の埋立処分場で飽和量に達する。なお、資源ごみ関しては、非公式ルートによる収集・リサイクルが活発になっている。ラテンアメリカ全体で活動するごみ収集者の数は約200万人にも上ると見られている。今のところ、ごみ収集業を法的見地からも職業として認めているのはペルーだけだが、ペルー環境保護省の調べでは、国内で約10万人がごみ収集で生計を立てている。