GDF SUEZのCEOが語る通貨戦略

ユーロは、いろいろ問題はあったが、ユーロ圏でビジネスをおこなう企業の為替リスクを軽減するという所期の目的を達成し、またそれゆえにヨーロッパの経営者らの支持を得ている――こう語るのはフランスの巨大ユーティリティGDF SUEZ(本社:パリ)のGerard Mestrallet CEOである。

Mestrallet CEOはDow Jones NewswiresとWall Street Journalのインタビューに応じ、「わたしはユーロに全幅の信頼を置いている」と述べた。ユーロという単一の通貨が10年ほど前に導入されるまでは、GDF SUEZはベルギーやイタリアやスペインで発電所をつくるたびに通貨リスクを負わなければならなかったと同CEOはいう。現在では、通貨同盟の範囲内のビジネスには通貨リスクがなく、これがユーロ圏の企業に力をあたえている。「これは通貨ばかりでなく、政治の統合、そして歴史をつくる話なのだ」

世界第2の発電業者であるGDF SUEZにとっては、ユーロのほかに、ドルおよびポンドの相場変動がおもな通貨リスクとなっているとMestrallet CEOはいう。同社は世界中に発電所と淡水化プラントをもち、エネルギー・サービスを提供している。

GDF SUEZは輸出業者ではなく、市場ごとにそこで使われている通貨で電力の生産と販売をおこなっているので、もっぱらユーロ圏内で生産をおこなっているメーカーのように強いユーロに苦しめられることはないとMestrallet CEOはいう。

新興市場も含めた通貨リスク・ヘッジ:

ヨーロッパを歴史的にベースとするGDF SUEZは、ロンドン・オリンピック向けに天然ガス・バイオマス・プラントを建設中であるが、そのいっぽうで新興市場からの引き合いも引きも切らないという。たとえば、中国においてGDF SUEZは高効率の冷暖房システムをすでに建設している。「今後30年で、エネルギー需要の80%が途上国に集中するのは目に見えている」とMestrallet CEOはいう。「エネルギーなしに経済成長はありえない」

ユーロとドルの圏外では、ブラジルがGDF SUEZの最も重要な市場だとMestrallet CEOはいう。GDF SUEZはブラジルに最も巨額の投資をしている企業のひとつで、同国ですでに20基の水力発電用ダムを建設している。ブラジルの通貨レアルのリスクをヘッジするために、GDF SUEZはブラジル開発銀行と協力関係を築いている。同行はブラジルで投資する企業に現地通貨で融資をおこなっており、GDF SUEZはこのレアルに重心を置いた借り入れにより、ブラジルでの通貨リスクの60%をヘッジしているとMestrallet CEOはいう。

ブラジルにおけるような、規模と価格が保証される政府出資のプロジェクトは、GDF SUEZにとって好ましいビジネスである。「われわれは外国で仕事をするとき、将来のキャッシュフローをできるだけ確保しようとする」とMestrallet CEOはいう。ブラジルのダム建設契約は、そこで発電する電力の70%を政府が30年にわたって購入するという約束のもとにおこなわれた。中東でも、ガス火力発電所や淡水化プラントで同社は同様の契約を交わしている。

GDF SUEZは外国為替ヘッジを利用はするが、通貨取引による投機はしない、とMestrallet CEOはいう。同CEOの戦略は、フランスおよびユーロ圏でのビジネスと外国でのビジネスとのあいだのバランスをとることだという。「われわれのようなグループ企業は、国内の事業と国外の事業のバランスが重要だ」