Veoliaの業績悪化、年内には底打ちか

かなり以前からわかっていたことだが、Veoliaの業績が上向きに転じるにはもうしばらく時間がかかりそうだ。Veoliaの株を買うなら、株価が底を打つと予想される2011年11月まで待ったほうがよいだろう。だが、たとえ年内には反転のきざしが見えるにしても、世界最大の水企業がかくも惨憺たる業績を発表すること自体、水ビジネスの関係者にとっては気の滅入る話にはちがいない。

業績の悪化は、すでに部分的には明らかになっていた――2011年7月29日、Veoliaは計8億ユーロ(約890億円)の資産減損と評価減を発表し、これがきっかけとなって同社の株価は9.5%下落した。次いで、8月4日、2011年前期の業績――株主が最も敏感に反応する純利益でいうと28.9%の落ち込み――が公表され、株価はさらに6.3%下落した。この原稿の出稿時点で、Veoliaの株価は13.40ユーロ(約1490円)であり、これはピーク時の2007年の65.65ユーロ(約7290円)と比較するとまさに見る影もない凋落ぶりである。Veoliaの株は水ビジネスに投資しているどのファンドにとっても中核を成すものであり、こうした主要株の下落は、資金運用のアンダーパフォーマンスと、水ビジネスへの資金の流れの減少につながる。

わるい話はこれにとどまらない。Veolia株の現在の時価総額は64億6000万ユーロ(約7200億円)で、これは2010年の売上の0.19倍にしかならない。業界最大の企業が市場からうけているこのような評価が、他の企業の評価倍率に影響しないわけがない。

こうなると、イギリス人ならさっそくその企業の清算価値に目を向けるところだ。仮にVeoliaが中国における水ビジネスの利権を市場に売りに出したとしたら、その価格はVeolia Environmentグループ全体の時価総額を上回る可能性がある。だが、忘れてならないのは、これはフランスの話であり、フランス人はそれほど手荒なことをしないということだ。逆に、経営陣は挽回のチャンスをあたえられるだろう。

Veolia経営陣の戦略の全貌は、2011年内の遅い時期にならなければ明らかにされないだろうが、11月がVeolia株の買い時だといえる根拠として、3つのことを挙げることができる。第1に、Veoliaの売上は、イル・ド・フランスにおける水道事業のつまずきや淡水化事業の後退といった困難があったにもかかわらず、ひきつづき伸びている(+15.5%)。第2に、負債額が減りつづけ、自由に使えるキャッシュフローが改善してきている。第3に、事業を展開している国の数を77ヵ国から40ヵ国に減らすことを明言している。

マルチ・ナショナルからマルチ・ドメスティックへ:

この第3の点が重要なのは、これがVeoliaの世界戦略の転換を暗示しているからだ。Veoliaは、これまでの「マルチ・ナショナル」から、「マルチ・ドメスティック」な経営構造に移行する必要がある。すなわち、どこであろうと、その土地の地元企業のようにふるまわなければならないということだ。経営責任を中央に集中させずに、その国その国の市場のコンテクストに沿って事業をおこなえるよう、権限を分散させる必要がある。これと対照的なのが「マルチ・ナショナル」モデルで、企業は中央の強力な管理のもと、中央のもつ専門技術や経営ノウハウをできるだけ多くの国の国内市場に押し広めることでスケール・メリットを追求しようとする。しかし、水ビジネスは――そして実際には他の環境サービスもそうだが――本来、地方色と政治色が濃厚にあらわれるものだ。そこで成功するには、フランスの外人部隊のような正規軍ではなく、ベトミンやアルジェリア民族解放戦線のようなゲリラ的な展開が必要なのである。

これについてのひとつの懸念材料は、Veoliaが地元企業としての展開を意図していない国において、前哨基地を維持するためにおそろしく多額の資金をついやしていることだ。こうした費用を節減し、その土地に根ざした知恵を活用して市場で支配的な地位を確立するほうが、ずっと賢明な選択肢といえよう。

明らかに、この種の変化が成果をもたらすには数ヵ月というより年単位の時間がかかるものだが、2011年内には、Veoliaにまつわるよい話とわるい話のバランスに変化が見えはじめると見てよい。11月が買い時である。