Siemens、再生可能エネルギーや水などのグリーン・テクノロジーに巨額投資

世界が再生可能エネルギーに大きく舵を切ろうとしているなか、ヨーロッパ最大のエンジニアリング企業Siemensは、グリーン・テクノロジーの今後予想される需要急増に備え、研究開発に巨額の投資をしようとしている。SiemensのPeter Loescher社長兼CEOはシンガポール最大の新聞The Straits Timesのインタビューに応じ、同社は研究開発予算40億ユーロ(約4600億円)の4分の1をグリーン・テクノロジーの研究に充てると語った。ここでいうグリーン・テクノロジーとは、エネルギー効率の改善から、再生可能エネルギー、さらには水関連の技術にいたるまでのあらゆる分野におよぶ技術を指している。

Siemensのグリーン・ビジネスの、投資を含む事業量について、Loescher社長兼CEOはこう述べている。「2010年のSiemensのグリーン・ポートフォリオは280億ユーロ(約3兆2000億円)だった。これは、過去2年間、2桁の伸びをつづけており、わが社の成長の大きな牽引力になっている。この280億ユーロという事業量は、2014年には400億ユーロ(約4兆6000億円)になっているだろう」

こうしたSiemensの成長戦略についてBloombergは、Loescher社長兼CEOは売上を競合他社よりも速く伸ばすことを狙っていると報じている。2011年3月、同社長兼CEOは全事業量の目標を1000億ユーロ(約12兆円)以上に設定した。ちなみに、2010年度の同社の事業量は約786億ユーロ(約9兆800億円)だった。アナリストらはまた、Siemensがこの3年間に185億ユーロ(約2兆1400億円)にまで膨れ上がった莫大な現金資産を企業買収に使って収益の底上げをはかる必要性に迫られているとも分析している。

シンガポールをハブに、アジア市場へ:

グリーン・テクノロジーは、アジアの多くの国ぐにが再生可能エネルギーに関心を示していることからもわかるように、Siemensのビジネスを勢いづかせるひとつの要因になるだろうとLoescher社長兼CEOはいう。世界的に見ると、ドイツが先頭に立って、再生可能エネルギーを倍増させ、2020年までにエネルギー消費全体に占める割合を35%にするとしているが、これは、やがて全廃する原子力発電の分を補う意味もある。

Loescher社長兼CEOは、多くの国ぐにがこうしたドイツの例に倣って、再生可能エネルギーへの投資を真剣に考えるだろうと見ている。「グリーン・エネルギーは、いまや競争力では従来の電力網と肩を並べるところまできている。たとえば、風力エネルギーについていえば、タービン技術が急速に進歩しており、補助金なしでも競争できるまでになっている」と同社長兼CEOはいう。

こうしたことはすべて、アジアにもあてはまると同社長兼CEOは考えている。急速に発展しつつあるアジア地域では、急増する人口へのエネルギー、住宅、および食糧の供給をどうするかという問題の解決を迫られているからである。

Siemensのアジア戦略においては、シンガポールがこのアジアという新興市場のハブとして重要な役割を果たすとLoescher社長兼CEOはいう。Siemensはシンガポールにいくつかの研究センターをもっているが、そのうちのひとつは、同社の水技術研究開発の世界のハブとしての役割を担っている。

Siemensはまた、シンガポールのエネルギー消費量の20%を供給しており、水供給のおよそ3分の1を担っている。「われわれはシンガポールと強固で長期的な関係を築いており、シンガポールをきわめて重要なハブと考えている」とLoescher社長兼CEOはいう。