世界資源研究所(WRI)のRobert Kimball氏が2011年5月末に報告したところによると、過去5ヵ月間にわたる深刻な干ばつの影響で、中国の長江は、かつてないほど水量が低下しているという。この干ばつは、飲料水の供給から製造業の困難まで、多様な影響を及ぼしており、ひいては人口や経済にも影響が及んでいる。
企業および投資家は、21世紀に水の重要性がますます高まるであろうことを認識している。しかしながら、彼らの多くは、水のリスクによって、彼らの資産やサプライヤー、製品市場がどこでどのように影響を受けるのかを評価するのに、いまだに苦慮している。Kimball氏によると、中国の干ばつおよび河川の流量減少は、実際に次のような経済リスクを企業にもたらしている。
- 船舶輸送機能の消失およびサプライチェーンの断絶:
河川の流量が減少したことで、ところによって、船舶の航行が不可能な状況に陥っている。 - 電力不足による生産への影響:
1万8000MWの発電能力を誇る三峡ダムをはじめ、複数のダムの水位が低下したことで、水力による発電量が約20%減少している。 - 農業の混乱および農作物生産量や価格への影響:
周辺の農家は、干ばつにより、穀物や綿花の植え付け時期を遅らせることを余儀なくされた。綿花の収穫量減少が予想されることから、すでに世界市場では綿花の価格が高騰しはじめている。
水リスクを管理したい企業は、まず、どれだけの水が手に入るのか、また、自らがどれだけの水を消費しているのかを把握することから始めるべきである。適切なリスク評価には物理的要因、規制面での要因、社会経済的な要因に関するデータが必要である。
WRIは、水に関するリスクを評価するための包括的なデータを提供することを目的としたプロジェクト“Aqueduct”を実施している。水の分布状況に関する先進的な水文学モデルとその他の水リスク関連要因に関するデータを組み合わせることで、“Aqueduct”は、その利用者が特定の河川流域地域において直面する水リスクを特定・評価する際に役立つものとなっている。同プロジェクトでは、すでに、中国の黄河に関するリスクマッピング・ツールのプロトタイプが完成しており、今後、長江やコロラド川など、世界中の流域地域がカバーされる予定となっている。
WRIの“Aqueduct”プロジェクトに関する情報は、以下のURLよりアクセスできる。
http://projects.wri.org/aqueduct