ホーチミン市で、地下水利用の増加により、淡水不足と地盤沈下のリスクが高まっている。ホーチミン・シティ大学のNguyen Viet Ky地質・石油学部長がSai Gon Tiep Thi(Sai Gon Marketing)紙に語ったところによると、最近の測定データは、同市の地下水位が地下4.6メートルにまで下がったことを示しているという。Ky学部長はまた、地下の水資源が減りつづけることはホーチミン市への警報のようなもので、同市の地下水量はすでにこれ以上の新たな利用に適さない域にまで達してしまったと述べた。また、Ky学部長によれば、地下の淡水層が縮小している原因には、塩水の浸入もあるという。
地盤沈下や水質悪化のリスクも増大:
Ky学部長はまた、地下水位の低下により、地下の地層間の空隙が増え、世界の他の都市で起きたような地盤沈下の起きるリスクが増したことも指摘している。都市の地盤が沈下すると、その都市は気候変動への脆弱性が増す。ホーチミン市は、海面上昇によってほとんどの土地が失われる世界の最も脆弱な10地帯のひとつにはいっている。
さらに、地下水面の下降は、流入する汚染物質の増加と、それにともなう水質の悪化も意味しているとKy学部長はいう。ホーチミン市環境保護局による最近の測定結果は、すべての観測点における地下水位が2009年と比べて最小でも0.36メートル、最大の地点では2.1メートルも低下したことを示している。これは、地下水の利用、特に深層の地下水の利用が増加しているためである。
対策は利用制限と雨水再充填:
こうした事態への対策として、ホーチミン市は地下水の利用を制限する地区を定めるとともに、今後は地下40メートル以下からの揚水を禁止することにしている。こうすることで、地盤沈下が最小限にとどまり、地下水位がしだいに回復し、その結果として、塩水の浸入も減って水質が改善されていくだろうとKy学部長はいう。
さらに、地下水位が大きく低下しているTan BinhやHoc Mon地区については、地下水層に良質の水を再充填することも検討されている。しかし、問題は良質の地表水をいかにして手に入れるかである。ホーチミン市内の河川、運河、湖沼などはほとんどが汚染されている。Ky学部長は、最もよい解決策は雨水を集めて地下の空隙に注入することだという。同学部長によれば、これは雨季の慢性的な洪水の問題も同時に解決してくれる最良策だという。現在、ホーチミン市の多くの地域は地面がコンクリートで覆われており、雨水が自然に浸み込むのを期待することはできない。