ベトナム南部を流れるサイゴン川の水質汚染は、流域の工業化が原因でここ数年深刻化しており、ホーチミン市への水供給が懸念されている。サイゴン川はビンズオン(Binsh Duong)省、ビンフォック(Binh Phuoc)省、ティニン(Tay Ninh)省 そしてホーチミン市を流れており、その流域には40の工業団地が存在している。しかし、そのうち廃水処理施設があるのは21ヶ所にとどまっている。また、ほとんどの廃水処理施設からの処理水は環境基準を満たしていない。
さらに、サイゴン川の川岸で操業している零細企業によって排出される一日あたり6万5000m3の工業・農業排水がさらなる汚染を招いている。それに加え、家庭からは74万m3を超える排水が同河川へ流入しており、その90%以上がホーチミン市から排出されている。水・環境技術研究所のLam Minh Triet所長は、河川の定期的な水質検査の結果によると、ベトナムが定めた基準値を多くの場合で超過しており、特にホーチミン市地周辺ではその傾向が強いと指摘している。廃水処理プラントの数は限られており、処理されている家庭排水は20%に満たなく、その残りは未処理のまま河川に垂れ流されていると専門家は指摘している。零細企業が多く立地するビンズオン省環境保護局のTran Thanh Quang副局長は、2010年だけで555の企業を取り締まり、総額126億ドン(約4700万円)の罰金を科したと述べている。同省には5000以上の企業が存在しているが、環境基準を満たしている企業は20%にも満たない。
Triet氏は河川の汚染に対処するため、サイゴン川を管理する組織の設立を提案している。関連する省の担当者、ホーチミン市議会、そして天然資源・環境省が当該組織に関わることになり、同組織は水質試験や監査を実施する。同氏はまた、汚染された河川を浄化するため、2011年から2015年にかけて1.7兆ドン(約6.3億円)を拠出し、工業団地や運河の浚渫を行う13のプロジェクトを提案した。Triet氏や科学者らは、もし汚染がこのまま放置されれば河川が死んでしまうと危惧している。ホーチミン市は川の汚染を防止するために真剣に取り組んでいかなければならないと同氏は語っている。