オランダでは2011年8月現在、同国26の水管理当局のうち半数が、既存の下水処理場を「エネルギー生産工場」として、ブランド再生する実施可能性調査を進めている。それによると、エネルギー中立的で、エネルギー生産も可能なプラントに作り変えることが、技術的に可能である。下水処理工程の最適化によってエネルギー消費量を最低限に抑えつつ、分解を促進することでエネルギー生産を最大化し、大幅の効率を達成する。その際、化学物質を添加して一次沈殿を促進することが、エネルギー中立性を確保するカギとなる。一方、エネルギーの生産は、廃棄物活性スラッジの熱加水分解を追加促進して達成できる。
オランダ応用水研究財団は2008年、自治体の下水処理事業を2030年時点でどのような形にすべきかを明確化する国際研究事業の一環として、環境工学エンジニアリング会社のMWH社に報告書を作成するよう委託した。同社は、下水処理場でも2030年にはエネルギーを生産できるようになり、そうなれば事実上、「エネルギー生産工場」としてブランド再生が可能だ、と報告した。
こうした考え方がなぜオランダで定着するのかというと、同国の下水処理当局は、エネルギー価格の上昇に対処し、政府とのエネルギー効率協定を達成するため、絶えず革新的な取り組みを進めざるをえないからである。当局は2030年まで毎年、エネルギー消費量を2%ずつ削減する、と公約している。これによって、自らの下水処理場を「エネルギー生産工場」としてブランド再生しよう、という推進力が働くことになった。
このようなブランド再生化は、オランダ国民の想像力をかきたてている。同国ではもはや誰も、下水処理場を建設する話などしていない。廃棄物が資源として見られ始めるなり、すべてが「エネルギー生産工場」と名称を変えている。このイメージは非常に良好で、国民は、この工場の研究開発や建設に国の予算を投じるのを支持している。このような取り組みは、水処理会社間の協力、廃棄物部門と水部門の協力があってはじめて達成されている(英国のような国では、そのような協力関係は、限定的であっても存在しない)。
またオランダ人は、長期的な見方を取れる点からも、利益を享受している。彼らはエネルギー中立的な解決法を中期的な観点から追求し、また、自国の法的要件を満たしていく工程を長期的な観点から考えている。こういうところから、<ブランド再生>といった新しい発想法を、彼らはとれるようになっている(英国のような国では、限られた予算を5年投資サイクルで投じるので、長期的な見方をとるのが非常に厳しい)。
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