下水処理場のメタンを用いて水素と電気と熱を生産する世界初のトリジェネレーション・エネルギー供給所がオープン

市民には輸送用燃料を提供し、産業施設には電力を提供する世界最初のトリジェネレーション燃料電池・水素エネルギー供給所が、2011年8月16日、米国のカリフォルニア州オレンジ郡衛生区(OCSD:Orange County Sanitation District)の下水処理場にオープンした。これは、同州の「水素幹線道路(hydrogen highway)」にできた最新の燃料供給所である。

トリジェネレーション・システムは、熱併給発電という2つの機能を持つコジェネレーション・システムに対して、3つの機能を併せ持つシステムのことで、これまでは熱源から生産される熱、電気に加え、発生する二酸化炭素を温室栽培などで有効活用するエネルギー供給システムを意味することが多かった。

しかし、Air Products and Chemicals Inc.(以下、Air Products)が運営するこのトリジェネレーション・エネルギー供給所は、下水処理プロセスの副生物であるメタンを燃料として燃料電池の動力とし、熱、水素、そして電気を同時に生み出すものである。

この燃料電池は、下水処理場で使われる約250 kWの電気を毎日発生させるとともに、1日25~50台の自動車に水素燃料を供給できる燃料供給所に送るのに十分な水素も生産する(この燃料供給所は、日本では、水素スタンドと言われることもある)。

政府機関と民間企業の連合が資金を出して開発したこの燃料供給所は、カリフォルニア州の道路を走る100台の燃料電池自動車に動力を供給する、同州にある約20カ所の水素施設の1つである。

参加している政府機関は、米国エネルギー省(DOE)、カリフォルニア州大気資源委員会(CARB)、OCSD、および南岸大気管理局(SCAQMD)である。

このプロジェクトを管理しているのはAir Productsで、FuelCell Energy, Inc.とカリフォルニア大学アーバイン校にあるNational Fuel Cell Research Centerも同社に協力している。

DOEのSteve Chalk再生可能エネルギー担当副次官補は、8月16日の声明のなかで、「このような新機軸は、クリーン経済を前進させるとともに、米国の創意あふれるアイデアと的を絞った投資が水素・燃料電池業界における飛躍的な進歩をどのように加速させることができるかを示している。このアプローチは、電気と熱の付加価値を提供することによって、水素燃料補給インフラの経済面での課題を克服するのに重要なステップを提供するものである」と述べた。なお、クリーン経済とは、省エネ、電気自動車、有機農業など、環境保全上利点のある商品やサービスを生み出す経済の部門を指す。

また、カリフォルニア州の水素燃料供給所の11カ所を運営しているAir ProductsのEd Heydorn氏は、「このプロジェクトは、水素の発生を目的とする廃水などの廃棄物の利用に、この技術をどのように適用できるかを示すことになる」と述べた。

なお、CARBは現在、ゼロ排ガス車基準の更新に取り組んでいるが、そのなかに燃料電池自動車の製品化を促進するための水素燃料供給インフラの整備などが含まれると見られている。

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