欧州がスペインを中心に水処理プラントの画期的制御ネットワークの開発に乗り出す

2011年12月27日、欧州が世界で初めて、下水処理プラント(浄水プラント)と海水淡水化プラントの運転を最適化するインテリジェント無線ネットワークの開発に取り組んでいることを明らかにした。世界の水処理大国のひとつ、スペインを中心として欧州全体で取り組んでいるプロジェクトであり、Hydrobionetsと名付けられている。

このプロジェクトが目指しているのは、下水処理プラントと海水淡水化プラントの効率を向上させることであり、そのために、バイオセンサーを組み合わせて最適な殺生物剤の投入量を計算してバクテリアの活動を抑制することができるインテリジェントな無線相互接続ネットワークを構築しようとしており、このネットワークが完成すると、海水淡水化のコストを45パーセント、下水処理施設のエネルギー消費量も74パーセント削減することができるという。

プロジェクトに参加しているのは、スペインのバレンシア大学、スペイン教育科学省主管の国立研究協議会(CSIC)、スペインの水メジャーのひとつ、Acciona社の水資源管理部門に当たるAcciona Agua社のほか、スウェーデン、ハンガリー、ギリシア、英国の研究センターであり、これらの研究機関と企業の専門分野を異にする研究チームが欧州全体でひとつの研究プラットフォームを形成しており、プロジェクトの活動そのものはすでに2011年秋から動きだしている。

12月27日に発表を行ったのは、スペイン・バレンシア大学のPedro Carrasco研究・科学政策担当副学長と欧州研究プロジェクト局のテクニカルディレクターÁngels Sanchis、それにバレンシア大学ロボット工学研究所(Institute de Robótica i TIC)情報通信システムグループ(GSIC)の責任者Baltasar Berefullであり、このプロジェクトはこのBerefullが調整官となって進めていく。

期間は3年、予算は350万ユーロ(約3億5400万円)。発表を行ったバレンシア大学のPedro Carrasco研究・科学政策担当副学長は、この研究が単なる技術の先陣争いだけにとどまらず、経済や社会の持続可能性を底上げすることによって大学から社会への知識移転を行う試みのひとつであることを強調した。

また、GSICのBaltasar Berefullは、この取り組みの最大の目標を「プラントの生産性を抜本的に引き上げ、そのコストを大幅に削減すること」と説明した上で、「海水淡水化プラントの場合は浸透膜の耐久性の向上、下水処理プラントの場合はバイオリアクターの耐久性の向上によって効率の改善を行い、化学製品もより正確に使用できるようにする」と、その目標達成のための手段も明かした。