欧州委員会、EU域内の水不足解決に向けた最終報告書を公表、南部加盟国での農業用水の過度の利用と再利用できていない点を懸念

2012年1月12日、欧州委員会の環境総局から水不足とその対策に関する調査報告の委託を受けていたコンサルティング会社Bio Intelligence Serviceは、その最終報告書”Water saving potential in agriculture in Europe: findings from the existing studies and application to case studies: Final Report” を公表した。この報告書で考察された対策には、(1)灌漑システムと農作物の選定などを含む技術的および管理面での対応、(2)水の再利用、(3)貯水とその有効利用、および(4)規制や料金の変更など社会経済的ソリューション、などが含まれている。

この報告書は水不足の危機に警告を発しその対策として様々な観点から勧告を提示しているが、それらの主なものは次のようである。

  1. 農地での水利用を削減する対策は、各地域の実情について詳細に調査し十分理解した上で進められなければならない。最も効果的なオプションの選定は、農地の土壌や作物の種類、そして当該地域の気候などのファクターを十分勘案して行なわれるべきである。
  2. 農業用水の効率的な利用を改善しようとする取組みは、「リバウンド効果」によって影響を受ける可能性がある。すなわち、当該地域で水利用を節減しても、それが他の地域での水利用が増大すれば相殺されてしまう恐れがある。
  3. EU域内の水源から取出されている水の4分の1は農業用に使用されているが、その多くは再利用できていない。この数字はEUの南部に位置する加盟国ではもっと高いものとなっている。

そして、同報告書は、欧州委員会はこのような農業用水の過度の利用と再利用できていない状況が、自然環境に及ぼす悪影響を懸念しており、EUの基本環境政策(Water Blueprint)における水不足と干ばつに関するEU政策についても見直すことになるだろうと述べている。