米国における2012年の水質浄化関連問題――CWAの対象水系の明確化やストームウォーターの流出削減などが優先事項

米国環境保護庁(EPA)の高官などによると、どの水系に連邦の法的権限が及ぶのかを明確にするための規制と建設後や再開発のサイトからのストームウォーターの流出を抑制する規制が、2012年に水質浄化法(CWA)関連で取り組むべき最優先項目になるという。

【CWAの法的権限が及ぶ水系を明確にする指針】
2011年5月にEPAと米国陸軍工兵隊が発表した、CWAの法的権限の及ぶ水系を明確にする指針案では、現在対象となっていない降水時のみ水がある河川や湿地の多くも含まれるように同法の対象が拡大されている。
農業従事者、建設業者、業界団体は、さらに必要な許可や費用が増え建設プロジェクトなどが遅れるとして、また共和党主導の下院運輸インフラ整備委員会のリーダーたちは、EPAはこの指針を規則に組み込みたがっているようだとして、いずれもこの指針案に反対している。いっぽう、環境保護団体は、この指針案を脇に置いておいてゼロから規則を策定すべきという産業界や議会の勧告は理不尽だとして、関連規則を迅速に策定し最終決定するよう求めている。
EPAは、新たに対象水系を拡大したのではなく、2001年より前には明らかに保護されていたがその後保護されなくなっていた水系を保護しようというものである、と述べたうえで、同庁が現在、CWAの対象範囲を明確にするための規則策定に取り組んでいることを明らかにした。

【建設サイトからのストームウォーターの流出を抑制する規則】
EPAは、建設後や再開発されたサイトからのストームウォーターの流出による汚染物質を制限するための規則案を2011年12月までに提案することにしていたが、これはできなかった。その間に2012年11月までにこの規則案を最終規則にしなければならないという和解が成立したために、EPAはこの規則案を提案する日付を改めて検討しなおしている。
今度の規則は、地域社会がグリーン・インフラを利用するための条項を含むとみられるほか、流水の吸収性を高めるための不透水性舗装の改良問題を扱う可能性がある。
州や自治体の水当局者は、この規則は技術的に難しく、また費用がかかると訴えている。これに対してEPAは、今度の規則でグリーン・インフラの利用を義務付けることは考えてはいないが、2013年にかけてグリーン・インフラの推進がEPAの優先事項であることに変わりはないだろう、としている。

このほか、EPAが検討している主な規則は次のとおり。

  • 1983年以降改定されていなかった、州の水質基準を決定する規則の改定案を2012年の早い時期に発表する予定である。これには、特例認可措置、水質低下を招かないようにするための要件、州政府による指定利用の決定方法などが含まれる可能性がある。
  • 冷却水の取水構造物による魚の大量死を減らすための規則は、予定通り7月に最終決定する方向で進んでいる。
  • 石炭焚き発電所に廃水流出量の上限を定める規則案は7月までに提案される予定である。
  • 大規模畜産経営体に対して特定のデータを規制当局者に提出するよう求める規則は、7月までに最終決定する予定である。これには農業団体が反対している
  • EPAは2011年10月、自治体政府が、合流式下水道越流水、分流式下水道越流水、ストームウォーターなどのすべてのCWA関係の義務に対処する統合計画を策定し、これを実施できるようにするアプローチの概要を発表した。EPAの支局が州や地方の政府と協力して費用効果的な決定を下すのに役立つ統合計画アプローチの枠組み案は、2012年の早い時期に発表される予定である。