インド水資源省は、2012年1月31日、“2012年国家水政策(National Water Policy 2012)”のドラフトを公表し、市民からの意見を募集している。この国家水政策は、同国の水資源管理の原則を示すものであり、1987年に初めて策定、その後2002年に改訂されて以来、修正が行われてこなかったが、このたび、水資源省を中心にステークホルダーと協議の上で見直しが行われ、草案が公表されるに至った。
2002年に公表された同政策は、水を“最も重要な天然資源かつ人間の基本的要求かつ貴重な国家資産である”と位置づけており、水に関するデータを管理する情報システムを構築することや、物理的・経済的に持続可能なサービスを行えるよう水道料金を設定すること、廃水を許容できるレベルまで処理してから排水すること、水を効率的に利用することなど、様々な水に関する政府方針を27項目にわたって盛り込むものとなっていた。
今回新たに策定された2012年国家水政策(案)の主要なポイントは、以下の通りである。
- 連邦レベルにおける水に関する法整備の必要性を強調する。インド憲法は、水に関する管理権限を州に与えているため、現状、連邦レベルでの法整備が十分でない状況にある。
- 公衆衛生に必要な最低限の量については、優先して確保されるべき需要と認識し、これを確保する。それを上回る部分については、水を経済価値のある商品と捉え、水の価値の最大化および水の効率利用や節水を促進する。
- 気候変動への適応の必要性を強調する。
- 水の効率的な利用の重要性を指摘する。ウォーターフットプリントや水監査の開発などについても盛り込まれている。
- 水に関する新たな機関の設立および水リサイクルやリユースにインセンティブを与える適切な水価格の設定を要求する。
- “サービスプロバイダー”としての政府の役割をサービスの規制管理者およびファシリテーターへとシフトし、水関連サービスをコミュニティや適切な官民連携(PPP)モデルを採用する民間部門に移管する。
- 水部門における問題解決のための技術研究開発を促進する。
新たな政策(案)は、“民営化”という言葉こそ使っていないものの、水を経済価値のある商品と捉え、また、政府の役割をサービスプロバイダーからファシリテーターへとシフトするなど、実質的に民営化の促進を意図する内容となっており、一部の活動家からは批判の声が上がっている。
上述の2012年国家水政策の草案は、以下のURLよりダウンロードできる。
http://mowr.gov.in/writereaddata/linkimages/DraftNWP2012_English9353289094.pdf