2012年2月15日、韓国の高麗大学と米国のYale大学の研究者たちが正浸透(FO)におけるコロイドファウリングの挙動を、逆塩分拡散の役割に焦点を当てて研究した論文が科学・技術・医学・社会科学分野の出版社Elsevierの科学論文データベースScienceDirectに掲載された。(下記URL参照)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0376738811008799
この論文によると、コロイドファウリングを極力防止してFOによる水処理プロセスの効率を改善するには、適切な延伸溶液を選択し、逆塩分拡散の速度や範囲を制御することが重要だとされている。また、FOプロセスの効率改善のためには、適切なFO膜を選択することも重要だとされている。
このコロイドファウリングの研究で懸濁物質のモデルとして使用されたのは平均粒径24 nmと139 nmの2種類のシリカナノ粒子だった。そして、コロイドファウリングの挙動が逆塩分拡散によってどのように変化するかを確認するために、逆拡散率の異なるNaClとLaC13が延伸溶液として使用された。
その結果、FOのコロイドファウリングでは、塩分が延伸溶液から供給溶液のほうへ拡散し、膜表面に形成されるコロイドファウリング層の中に蓄積されることを示唆する結果が得られた。塩分が蓄積されると、ケーキ促進浸透圧(CEOP)の増加が著しく加速され、浸透水を流そうとする浸透駆動力が低下した。また、懸濁物質として24 nmの粒子だけを用いた場合は実質的にケーキが形成されず、ファウリングが確認されなかったが、139 nmの粒子を用いた場合と両方の粒子を混合して用いた場合には、著しいファウリングが観察された。さらに、コロイドのケーキ層内部の溶液の条件(イオン強度、pH)がシリカ粒子の凝集や不安定化を促進する条件になると、ファウリングが著しくなる傾向も見られた。
実験では、クロスフロー速度を変化させ、コロイドファウリングの可逆性も調べられた。その結果、コロイド粒子の不安定化・凝集が起こらなければ、FOプロセスにおけるコロイドファウリング中の浸透流は、クロスフロー流速が8.5 cm/sから25.6 cm/sに増加したときにほとんど完全に元に戻った。
これらの結果から、FOプロセスでは逆塩分拡散がコロイドファウリングの挙動とともにファウリングの可逆性を制御する重要なメカニズムになるとされている。そして、コロイドファウリングをできるだけ少なくし、FOの運転効率を高めるためには、適切な延伸溶質を選択することによって逆塩分拡散を最小化するとともに最適なFO膜を選択することが重要だとしている。