EU加盟国の市民の多くが、EUが水問題の解決に向けてさらなる措置を講じるべきであると考えていることが、2012年3月22日の世界水の日(World Water Day)に合わせて発行された欧州委員会による世論調査の報告書によりわかった。2012年内に発表される予定である水の安全保障のためのEU基本環境政策(Water Blueprint)に対する懸念はほとんど言及されなかったものの、水消費が環境に与える負荷に関してより多くの情報を提供すること、汚染者に対しより多くの罰金を科すこと、水の使用効率改善のためのインセンティブをさらに設けることなどが、現在の問題を解決するために必要であるという回答が得られた。
欧州委員会はすでに、流域レベルのデータ管理、農業による水資源への負荷の緩和、水不足対策、建物における水使用の改善や効果的な水道料金の設定を目的としたWater Blueprintに盛り込むための政策オプションに関する意見募集を開始している。今回の調査結果によると、回答者の42%が水の使用量に応じて料金を徴収すべきであるとしている。また、その他の42%は上記の意見に賛同しつつも、社会的要因を考慮するための何らかの措置を補足で導入すべきであると回答した。いっぽう、回答者の13%は水に価値をつけることに賛同しなかった。
しかしながら欧州では、そのような措置が政府によって実際に導入される前までは、環境配慮に対して多くのコストを支払うのに前向きである傾向があるため、調査結果を鵜呑みにすることはできないと言える。近年の事例としては、市民の反発を受けて頓挫したフランスにおける炭素税がある。
欧州委員会が報告書を発行したのと同日、環境団体の欧州環境ビューロー(EEB)が、欧州の主要な10の河川について、水枠組み指令の施行によってどのような成果がもたらされ、何が達成されていないかについて調査した報告書を発行した。同報告書では、国際輸送に適した効率的な運輸インフラ・ネットワークの構築を目的としたTEN-T構想の一部として実施されるドナウ川の河川輸送システムの開発が、生態系に及ぼす影響が大きいとして懸念されている。EEBはまた、エルベ川やライン川などにおける流域管理計画の欠点を指摘している。さらに、水枠組み指令が掲げた2015年12月までに、地表水および地下水の水系を“良好な状況”にするという目標を達成するためのEU各国の措置は不十分であり、同指令で設けられた適用除外が乱用されていることも指摘された。
URL:欧州市民の水問題に対する意識調査
http://ec.europa.eu/public_opinion/flash/fl_344_sum_en.pdf
URL:欧州主要10河川における水枠組み指令に基づいた実態調査(EEB)
http://www.eeb.org/EEB/?LinkServID=E21888ED-5056-B741-DBC956582B6819DA