アメリカ企業のなかで、節水が大きなテーマになっている。これは単に環境上の配慮やコスト低減のためばかりではない。多くの場合、節水は企業の存続を左右する問題としてとらえられているのである。
水を文字通り湯水のごとく使える時代は終わった。世界の人口が増し、水需要が急激に増大するなか、水の供給量はあまり変わらず、必要な場所で必要な時に水を得るには、以前よりコストをかけ、以前には考えられなかった工夫をこらさなければならなくなった。しかも、水は単に水だけの問題ではない。水は、ものを生み出すのに直接必要なばかりでなく、大量に水を使用する発電というプロセスを通して、ものの生産に間接的に使われている。こうしたことから、多くの企業はかなり前から節水というこの大きなテーマに取り組んでいる。
FordとHondaの例:
Ford Motor Co.は、2000年から2010年にかけて水の使用量を62%削減した。現在、同社は向こう3年間でこれをさらに30%削減する取り組みを進めている。これはめざましい成功例といえるかもしれないが、どの会社でもこううまくいくというわけではない。たとえば、Honda Motor Co.は、節水の取り組みを進めていたにもかかわらず、2011年度の水使用量は前年度を17%上回った。これは、猛暑のために、製造施設の空調に使う水が増えたことによる。
IBMの取り組み:
ヴァーモント州バーリントンにあるIBMの半導体工場では、おびただしい量の水を自社で処理している。半導体製造は、よく知られているように大量の水と電力を使う。だが、それにもかかわらず、この半導体工場は2000年から2009年にかけて水の使用量を29%カットし、それによってコストを年間360万ドル(約3億円)節減した。これは、工場の仕組みを変え、自然の天候や水流のパターンをうまく利用できるようにしたことによる。
たとえば、冬期には水を冷やすのに電力ではなく外気を使う。また、工場内に自然に流れ込んでくる水からエネルギーを得て、電力消費量を減らしている。さらに、IBMのこの工場は、水の使用量あたりの生産性をほぼ倍増することに成功した。すなわち、この工場の単位水使用量あたりの半導体チップの生産数は、2009年には2000年の80%増となった。