Veoliaの株価、2012年上期決算を受け年初来最大の下げ幅

最大の水ビジネス企業Veolia Environment SAの株価が急落し、年初来最大の下げ幅を記録した。すでにVeoliaは、投資の拡大と経費の節減を表明してはいるが、イタリアにおける事業や廃棄物事業などの減速が響いた。

2012年8月2日、証券取引所ユーロネクスト・パリでのVeolia Environmentの株価は、上半期決算の発表をうけて12%下落し、午後3時4分に8.127ユーロ(約802円)となった。これは年初来最大の下げ幅で、年初からの下げ率は46%となった。同日、Veoliaは、2012年上半期の業績不振について、イタリアにおける事業の評価減、減速する経済、およびフランスにおける水部門の「契約の腐食化」(contractual erosion)が原因であるとの見解を示した。また、リサイクル材料の価格低下や廃棄物の減少も大きな要因となっている。

これについてBanco BPIのユーティリティ・アナリスト、Louis Boujardはこう述べている。「業績がよくなかったのは、負債を減らすスピードが不十分だからだ。そこのところをはっきりさせなければ、株価のこのような下落は説明がつかない」

VeoliaのAntoine Frerot CEOは、資産の売却、負債の圧縮、および世界展開の抑制によって収益性を上げ、事業を再構築することを計画している。2012年、Frerot CEOは自分をその地位から追放しようと試みを退け、イギリスの水道事業、アメリカの廃棄物事業、それにバルト海諸国の廃棄物事業の売却を主導してきた。

Veoliaは2012年から2013年にかけて、50億ユーロ(約4900億円)の資産を売却し、投資額を5億ユーロ(約490億円)縮小する計画である。また、事業経費を2013年には2億7000万ユーロ(約270億円)、2015年には5億ユーロ(約490億円)節減することにしている。

上半期の決算の発表にあたって、Frerot CEOはこう述べている。「この困難のなかにあって、われわれはコスト削減の取組を強化し、投資を減らすことを決意した」

2012年上半期決算の概要:

Veoliaの発表によると、2012年上半期の純利益は1億5300万ユーロ(約151億円)だった。ちなみに、2011年の同期には、同社は6720万ユーロ(約66億3000万円)の純損失を計上していた。また、Veoliaは2012年上半期の終わりまでに、計画されていた資産売却の60%を完了している。

Veoliaはまた、2011年12月に掲げた目標――2014年から売上高を年3%以上伸ばし、調整後営業キャッシュフローを平均5%以上増加させるという目標――を再確認した。

営業利益は、2011年上半期に1億8000万ユーロ(約177億円)だったものが、2012年上半期には5億2300万ユーロ(約516億円)となった。また、売上高は148億ユーロ(約1兆4600億円)だった。

この上半期決算をBank of America Merrill Lynchのアナリスト、Marco Mautoneは、「予想以上に悪い基本トレンドを示すもの」と評し、Veoliaへの投資判断を「中立」に引き下げた。Mautoneはさらに、イタリアにおける評価減や、大量輸送事業Transdevの売却、また、場合によってはベルリンの水道事業Berlinwasserの売却も、2012年の第4四半期まで持ち越される可能性があることを指摘している。

イタリアの事業については、Veolia EnvironmentのPierre-Francois Riolacci最高財務責任者(CFO)も「われわれにとっては、たいへんな試練の時だ」と述べている。

イタリアでは、Veoliaは8900万ユーロ(約88億円)を投入して、傘下のエネルギー企業Dalkiaの現地法人の「合法的な再編成」を実施しているところだが、2011年以来、すでに400人のスタッフを失い、廃棄物と水の事業の一部を閉鎖している。上半期決算報告のなかで、Veoliaはまた、ベルリンの水道料金が2012年内に18%、2013年から2015年にかけて17%値下げになる可能性があることにも言及している。

今後の展開:

水道事業契約の権利を維持していく力のないところでは、Veoliaはその権利を売却するとRiolacci CFOは言う。

Veoliaはフランスの上水道市場の35%、水処理市場の22%を占めているが、そのフランスにおいて、水使用量の低下と、「契約の腐食化」が市場を蝕みつつある。Riolacci CEOがボルドーであった最近の入札を引き合いに出しているように、競争は激しさを増している。

HSBC Securities Inc.のアナリストVerity Mitchellは2012年8月1日に公表したコメントに、Veoliaはフランスにおける「マージンの腐食化」とともに契約をも失うリスクをおかしていると書いている。Veoliaはまた、処理するべき廃棄物の量が減少しているという事態にも対処していかなければならないだろう。

Veoliaは、世界への展開をおよそ40ヵ国に絞る方針を表明している。2006年、同社はHenri Proglio前CEOの拡張熱のおもむくままに、77ヵ国に進出した。

Veoliaの純金融負債は2012年6月末現在で147億ユーロ(約1兆4500億円)である。Frerot CEOは、負債を2013年末までに120億ユーロ(約1兆2000億円)以下に減らすとともに、2012年と2013年の1株あたりの配当を、2010年の1.21ユーロ(約119円)から引き下げて70ユーロセント(約69円)にすることをめざしている。