国際水協会が2年ごとに授与しているアジア太平洋地域プロジェクト・イノベーション賞の応用研究部門で、シンガポール国営水道公社(PUB)の魚利用の水質監視システムが優秀賞を獲得した。このシステムは、コイ科の熱帯魚スマトラの行動を自動的にモニターすることで、水質悪化の警報情報を得ようというものである。ちなみに、同部門の最優秀賞は、浄水と汚泥リサイクルの新しい方法の開発でオーストラリアが受賞した。シンガポールの優秀賞受賞は、2012年7月1日から6日まで開催されたシンガポール国際水週間の期間中の7月3日に発表された。
水質監視システムの概要:
PUBのこの水質監視システムは、淡水魚のスマトラを使って水道水の汚染を検知するというもので、2006年から研究がはじまった。2011年からは、それぞれひとつの水槽をもつ水質監視ユニットが42基、全国各地に配置された。設置場所は、浄水場や、浄水処理済みの水を貯める配水池などである。
監視ユニットの水槽には20尾のスマトラが飼われており、そこに、水質をチェックすべき水のサンプルが流れ込むようになっている。水槽中のスマトラの動きは、カメラで監視されている。半数のスマトラが死ぬと、警報システムが起動し、水のサンプルが自動的に採取され、分析にかけられる。
少人数で同時に何ヵ所もの水質監視が可能:
PUBの広報担当者は、この水質監視システムを使えば少ないマンパワーで同時に何ヵ所もの水質監視が可能になると述べている。PUBでは以前にも水質監視に魚を使ったことがあるが、そのときにはスタッフが各地の水槽をまわってチェックする必要があった。この広報担当者は、さらにこう述べている。「各地の監視システムからの信号はすべて中央のコントロール・センターに送られるので、4人ないし5人のスタッフがいれば国中の多くの施設をモニターすることができる」
水質監視ユニットの費用は、1基が最高で8万米ドル(約630万円)である。この技術は、PUBと、科学技術研究庁のインフォコム研究所が共同で開発した。
このシステムはまた、水槽で飼われている魚が未知の汚染物質も検知できる点が、他の検知方法を使ったシステムよりもすぐれている。
なお、PUBはこのほかにも、国内の水道関連でこれまでにおよそ350件の研究プロジェクトを実施している。