今後40年間、都市部の人口は、最低でも毎週100万人ずつ増加していくことが予測されている。このような背景のなか、IWAの事務局長であるPaul Reiter氏は、2012年5月1日にソウル市内で行われた記者会見で、「水に関する専門家は、自身が考える水資源の調達源や、水の再利用法に関する認識を改める必要がある。9月に開催されるIWAのWorld Water Congress and Exhibition 2012では、水資源の持続可能性に向けた未来の技術やアプローチが注目を集めるだろう。同会議に出席する5000人にも及ぶ水の専門家達への最も重要なメッセージは、新たな水管理への理解を急がせることである。私たちは、都市域への水供給に関する従来のアプローチを打破しなければならない」と述べた。
現在世界中でさまざまな水問題が生じており、安定供給、公衆衛生、排水、廃水の再利用、工業管理、新技術導入による環境影響などがその一例である。
2009年から2050年にかけて、地球全体の都市部の人口は29億人増加し63億人に達すると見込まれているが、これは、新たに100万~150万人規模の都市――オークランド、ハラレ、クアラルンプール、ベイルート、コペンハーゲン、ブリスベン、プラハなどと同規模――が、毎週生まれていることと同等である。このような背景をふまえ、Reiter氏は以下のことを喚起した。
「私たちは、今日でさえ水が供給されていない人々が存在しているといった非常に脅威的な問題に直面しているが、これに加え、毎週都市部へ新たに100万人分の水を供給しなければならない」
韓国の意欲的な淡水化研究計画
約400万の人口を抱え、IWAのWorld Water Congress and Exhibition 2012のホスト都市である釜山市は、海水エンジニアリングや淡水化などの水処理技術の世界標準を提起するつもりである。同市は2013年に、動力および膜サイズの点で、その中では世界最大規模の逆浸透膜プラントの運営を始める予定である。同プラントで使用する膜は直径16インチ(約40 cm)になり、これは現在の標準的な膜の2倍の値である。
韓国淡水化プラントセンターの事務局長でもあるキム教授は、「釜山でのプロジェクトの目的は研究・開発と、実践レベルの技術を運営すること、そしてその後、主要技術を海外に輸出することである。気候変動が原因となる不確実性を伴った長期間の水不足に悩む地域において、使用可能な研究成果が得られれば、それが最も大きな利益である。同プロジェクトは、包括的かつ戦略的な技術開発による、海外市場の開拓を目指したものである」と述べた。
一方で、逆浸透膜を用いた淡水化手法には、取水量、前処理、逆浸透手法、後処理などの多くの課題を解決することが求められている。このため、キム教授は次のように付け加えた。
「改善が必要な多くの研究課題が残っており、これらの解決によって水分野は更なる飛躍を遂げるだろう」
水供給に対する市民からの信頼を保証する
釜山市の淡水化プラントについて、釜山市環境グリーン事務局 事務局長のキム氏は次のように述べている。
「釜山市民は、釜山市の全飲料水の94%を担っている洛東江(※韓国最長の河川)からの取水量に大きな不安を抱いている。そのため、過去に度重なる水質汚染に苦しんだ、洛東江に代わる水供給の代替源を見出すことは、釜山市にとって必要である。水供給システムに対する市民からの信頼を回復するためにも、私たちは新たな淡水化プロジェクトの推進を決めた。どの国内河川においても、水質汚染が生じた場合、予備の供給源はない。なので、新たな淡水化プラントによって、水の供給源の多様化と高品質な水道水が保証されることになるだろう。」
同プラントによって、1日あたり4500万Lの淡水を製造可能になるが、これは5万世帯に対して十分な飲料水を供給できる量である。釜山市では、1人あたりの1日の平均水使用量は301Lである。