インド政府は、安全な飲み水を全国民に安価で提供するという目的を達成するため、その一環として水分野の研究開発への民間部門の参入を促進したいとしている。
マンモハン・シン首相は以前から、2020年までに科学技術で世界のトップ5入りするという国の目標に向かって、産業界がこれまでよりも大きな役割を演じることを求めてきた。同首相はまた、水を手にはいりやすくすることを、科学者らが注目しなければならない大きな課題のひとつに挙げている。
科学技術イノベーション政策の一環として
安全な飲料水という課題に低コストのソリューションをみつけるための投資を促進する目的で、インド政府は新たな優遇策を、2013年の科学技術イノベーション(STI)政策の一環として打ち出した。
この政策は2013年1月3日に公表されたもので、公的な資金へのアクセスに関して、民間部門の研究開発を公共機関と同等に扱うことを提案している。さらにこの政策は、研究開発への総支出を、民間のさらなる寄与を促すことにより、向こう10年間にGDPの2%――現在の2倍のレベル――にまで高めることをめざしている。
産学交流の強化と農業改革
シン首相は、さまざまな優先分野のなかでも特に安全な飲料水の提供ということにおいて、インドの産業界が主導的役割を演じることの重要性を強調している。
これについて、2013年1月4日にひらかれたインド科学会議100周年記念大会に出席したシン首相は、次のように述べた。「この点についてインドの産業界は、業界内部の研究により、また、さらに重要なものとしては産学交流の強化によって、積極的な役割を果たしていかなければならない」
シン首相はまた、インドでは人口の65%が農村部に住んでいることを指摘し、科学界に対し、農業の生産性向上のための取組を最優先課題とするよう求め、次のように述べた。「農業改革は、科学技術政策を含めたわが国の政策のなかで最も優先されるものでなければならない。われわれは、科学技術分野ですでに名前を知られているところばかりでなく、この地域で頭角をあらわしはじめた力のある革新的なグループとも手を携えていかなければならない。わが国の第12次5ヵ年計画では、食の安全保障にとって不可欠なものとして農業分野の4%の成長を目標に掲げている。しかし、それには水と土地の不足という制約を乗り越えなければならない。われわれには、節水技術と、気候変動に強い多様な作物という点で新たな飛躍が必要なのだ」
民間投資拡大への環境整備
インド政府は、民間部門の投資がよりしやすくなる環境を整えることによって、現在は全投資額の2.5%以下にすぎない研究開発投資の割合を増やしていくことができると考えている。
この目標に向かって、インドのSTI政策には、インドと海外における研究開発センターへの民間部門の投資を支援し、それとともに、インドにおける研究開発に政府や民間を含む多様な利害関係者が参入することを可能にするさまざまな施策が盛り込まれている。