シンガポールでは、2012年9月の「下水・排水法(Sewerage and Drainage Act)」の改正にともない、廃水による汚染リスクを最小化することを目的とし、不適切な産業排水に対する罰則が強化された。本改正は2013年に発効する予定である。
新たな規制の下では、工業廃水の違法排出を行った違反者に対して、現行の5000ドル(約45万円)の罰金から1万5000ドル(約135万円)へと罰金が増額され、また最大で3か月の懲役刑も同時に科されることとなった。このような違法排水には有害化学物質が含有されている可能性があり、その結果、再生水に悪影響を与える恐れがある。
違反排水に対する監視システムの強化
シンガポール公益事業庁(PUB)は、2012年11月、総額250万ドル(約2億2500万円)をかけて、下水中の化学物質量を監視するためのシステムを導入した。このシステムは、各工業地点における40のリアルタイム監視装置から構成されるものであり、システムが違法排水を検知すると、警報がPUBに送られる仕組みとなっている。システムを開始させてから、これまでに20の警報がPUBには送られた。PUBはそのうちの18の事例を、公共下水に化学物質を排出した刑事被告人として認定した。この監視システムの導入に対して、PUBのシニア・エンジニアであるIdaly Mamat氏は次のように述べている。「これまでは連続的な監視システムはなく、工場排水に対する定期的な監視および検査を実施していた。しかし、このシステムの導入以降、揮発性有機化合物(VOCs)濃度を即座に追跡することが可能になった。このシステムを展開している範囲内であれば、突然のいかなるVOCs排出に対しても、より迅速に対応することが可能である」
さらに排水の監視システムをより確実にするために、PUBは下水道内に、下水の水位を監視するセンサを約1000個導入した。水位が標準値を超えた場合、PUBに警告が送られ、その後PUBが調査を行い、問題を解決する。この監視システムは、水路や貯水池の汚染につながる可能性のある、下水の氾濫を防ぐのに役立っている。これに対して、Mamat氏は「それまでは、市民からの声を通じて、こういった事態を把握していただけであり、下水管またはマンホールからの氾濫を頻繁に目にしてきた。そして、それを修復することしかできなかった。しかし、今はこれらの水位監視システムによって、氾濫前に過剰な水位を検出することが可能となったのである」と評価している。センサの導入以来、PUBは1日当たり約10回の警告を受信しており、そのほとんどは障害物による下水管の詰まりに関連したものである。