米国地質調査所(USGS)が2013年5月23日に発表した最新の調査で、米国全域の帯水層の縮小がさらにペースを上げていることが分かった。報告書Groundwater Depletion in the United States (1900-2008)(米国の地下水減少(1900~2008年))では、米国内の40カ所の各帯水層について、過去の調査や注目すべき地下貯水地帯の新しい分析からの情報をまとめて、長期の累積減少量を検討している。報告書の著者であるUSGSの水文学者Leonard Konikow氏は、「地下水の減少はめったに評価されないし、正確に文書として記録に残っていないが、給水の持続可能性を脅かす世界的に深刻な問題として認識されるようになっている」と述べている。
USGSの所長代理であるSuzette Kimball氏は、「地下水は、米国でもっとも重要な天然資源の1つである。農村部と都市部の両方の飲料水源となり、灌漑と工業を支え、河川の存続に不可欠であり、生態系を維持する機能を持っている」と説明している。Kimball氏によると、一般的に地下水システムは人間活動に対する反応が遅いため、地下水を持続可能な方法で管理するためには、長期的な視点が不可欠であるという。
報告書は以下のURLから閲覧可能である。
http://pubs.usgs.gov/sir/2013/5079/SIR2013-5079.pdf
2000年以降、地下水の減少量が加速
報告書では、1900年から2008年にかけて、米国全土の帯水層からエリー湖*2杯分超の水が取り出されてきたことが示され、米国における地下水枯渇の規模の大きさを明らかにしている。最大の地下水減少率は最も新しい調査期間である2000年から2008年の間で、その間の減少量は平均すると年間約25 km3(250億m3)にも達する。ちなみに、調査の全対象期間である1900年~2008年の平均は、年間9.2 km3(92億m3)であった。
20世紀の米国の地下水の累積減少量は合計で約800 km3(8000億m3)であったが、その後2001年~2008年の8年間だけでその25%に相当する約200 km3(2000億m3)が減少した。米国の地下水の全累積減少量は1940年代後半に加速し、その後20世紀のあいだは一定割合で続いてきた。
オガララ帯水層の減少量は年平均で102億 m3にも
米国で最も有名で且つ最も多く調査された帯水層のひとつに、ハイプレーンズ(High Plains)、またの名をオガララ(Ogallala)という帯水層がある。これは、中西部の広さ17万平方マイル(約44万km2)を超える大地の下に存在し、周囲の農業地帯の灌漑や飲料水にとっての主要な水源となっている。1940年代以降、灌漑用としてオガララ帯水層から相当量の水がポンプでくみ上げられたため、あちこちで160フィート(約49 m)を超える大きな地下水面の低下が起きてきた。
USGSの調査では、2000年以降オガララ帯水層は、非常に早いペースで減少を続けていることが示された。特に2001年~2008年までの減少量は、20世紀全体を通してのオガララ帯水層の累積減少量の約32 %にも達している。最近の年間の減少量は、平均すると約10.2 km3(102億 m3)となり、これはエリー湖の水量のおおよそ2 %に相当する。
地下水の枯渇とそれに伴う悪影響
1950年以降、農業用水、工業用水、および都市用水としての米国の地下水源の使用は拡大してきた。しかし、降水などによって再充填されるよりも速いペースで取水されると、地下水は減少してしまう。そして帯水層が枯渇すると、地盤沈下、井戸の水量の減少、湧水や小川の流量の減少など、多くのマイナスの結果がもたらされる。
Konikow氏は、「大規模且つ累積的な長期の地下水の枯渇はまた、直接的に海面上昇の一因となっている。さらに地盤沈下の結果として、間接的にも各地域での相対的な海面上昇の一因となる可能性もある」と海面上昇との関係性を説明している。Konikow氏によると、2000年~2008年の米国の地下水の減少量は、その期間に観測された世界的な海面上昇の2 %超分を説明することができるという。
また環境への影響だけでなく、地下水の減少は米国の水需要の持続可能性にも悪影響を与えている。
* 面積2万5821 km2、これは琵琶湖の面積の40倍以上にもなる。貯水量は458 km3。