GEとmemsys clearwater Pte. Ltd.*1は、共同で開発した蒸気圧縮機駆動式の新たな水処理用膜蒸留(MD)システムの実証試験を、テキサス州の水圧破砕の廃水圧入井で実施してきたが、200時間の連続運転を記録し、この試験が成功したことを2013年9月23日に公表した。
この新しいシステムは、水圧破砕で生じる油汚濁水の濃縮に使われるもので、油汚濁水処分のコストを低減し、水の再利用を可能にする目的で開発された。両社のこの共同プロジェクトで、蒸気圧縮とMDを組み合わせたシステムが、非従来型のガス探査・生産にともなって生じる塩分濃度の高い油汚濁水を処理できることが実証された。この試験がもたらした成果には、以下のようなものがある。
これといった性能の低下や洗浄の必要なしに、100%の連続稼働が可能である。
ブライン濃度が飽和に近い状態で、安定した性能を示す。
従来技術と比べてエネルギー消費量が少ない。
蒸留された水の水質がよい。
両社のコメント
今回の実証試験の成功について、GE Power & Waterの水および処理技術部門で熱利用製品を統括するBill Heinsはこう述べている。「ブライン濃縮のコストが下がると、廃水を輸送して深井戸注入するといういまの方法よりもっと持続可能な処理ができるようになる。処理によって浄化された水は再利用可能だから、ガス井1本につき必要な淡水の量も減ることになり、それによって、コストと環境への影響もさらに減らすことができる」
今回のプロジェクトの成功をうけて、GEとmemsysは、地理的条件などが異なる別の現場でもこの技術の実証試験をつづけるとともに、処理プロセスのスケールを拡大していくとしている。
いっぽう、memsysのGötz Lange CEOはこう述べている。「通常の廃熱利用ではなく、蒸気圧縮機と組み合わせたわれわれのプロセスを使うことにより、最も難しい廃水であっても処理が可能になった。これによって、この技術を応用できる範囲がさらにひろがった。今回の画期的技術の開発においてGEはつねにすばらしいパートナーでありつづけた。われわれ両社は、石油・ガス産業向けの油汚濁水処理に使うこの技術の商業化にひきつづき取り組んでいく。そのために、memsysはモジュールの生産量を8倍に増やす取組をはじめている。これは、日量で最大5万m3の水処理を、年間を通してまかなうのにじゅうぶんな量だ。これによって、われわれの技術はあらゆる分野のmemsysプロセスに使われるようになるだろう」
GEとmemsysは、シェール・ガス、コール・シーム・ガスなど、水圧破砕によって生産される非従来型燃料を含め、急速に成長しつつある非従来型資源市場向けのMD技術を共同で開発すべく、2012年に提携契約を結んだ*2。この契約のもと、GEは技術開発と試験に投資し、その見返りとして、この分野におけるmemsysのMD技術の独占使用権を得る。
*1 ドイツとシンガポールを活動拠点とする。さまざまな用途の減圧蒸留技術の開発で最先端を行くメーカーである。memsysの特許技術である熱分離モジュールは、石油、ガス、鉄鋼産業における廃水処理、ブライン濃縮、低温蒸留、低エネルギー淡水化のほか、アルコール蒸留にも使われている。*2 EWBJ43号に関連記事有り「GE、石油・ガス採掘向け水技術で膜蒸留のmemsysと提携」
EnviXコメント
この実証試験の成功を公表した翌月にmemsysは、事業開発部門(Business Development Unit)の立ち上げを発表し、MD技術の商用化を進めることを明らかにした。また、この事業開発部門の設立に際しては以下の3名を新たに迎えている(それぞれの括弧内は過去の経歴)。
- Hendrik Müller-Holst
(ドイツのFisccher Eco Solutions社の技術セールス部門トップを経験) - Edmund Wong
(ZenonやHyfluxなどでシニア・ポジションを経験) - Wilson Tan
(US FilterやGEなどで合わせて20年以上のセールス・マネージャーを経験)
同社の地域戦略は明らかになっていないが、シェールガス開発が盛んな米国などを中心に、今後はMD技術を用いた廃水処理システムの展開を行っていくと予想される。また、そのMD技術の独占使用権をGEが有していることからも、このシェールガス随伴水処理市場におけるGEの動向に注目する必要があるだろう。