米国パデュー大学(インディアナ州ウェストラファイエット)は、2013年10月23日、太陽からの紫外線を利用した水の殺菌システムのプロトタイプを開発したと発表した。このシステムは、土木工学および環境・生態学的エンジニアリング分野のErnest “Chip” R. Blatchley III教授、そして食品科学および生物科学分野のBruce Applegate准教授によって開発されたものである。
Applegate准教授はこの水殺菌システムについて、パラボラ型反射鏡に配置されたUV透過パイプを通じて水を汲み上げるものだと仕組みを説明する。「この反射鏡の形状が太陽光の紫外線を集約し、パイプ内には外側よりも紫外線の輻射量が大きくなります。この紫外線が細菌のDNAを傷つけるため、細菌はそれ以上増殖することができなくなります。こうして、安全な水を生成するのです」
紫外線が豊富な赤道付近の地域で活用
Blatchley教授は、世界には廉価で安全な、かつすぐに利用できる状態の水にアクセスできないでいる人が8億人いると指摘する。「微生物病原体などのよく発生する問題は、人や動物の排泄物に大いに関係しています。安全な水へのアクセスをほとんどまたは全くもたない人々を世界的な観点で見てみれば、その大部分が赤道付近に暮らしていることがわかるでしょう。一方で太陽の紫外線は赤道直下または付近の国々においては非常に豊富に降り注いでいるのです」
Blatchley教授は、パデュー大学があるウェストラファイエットで行われた実験の結果は、より多くの紫外線が存在する場所でも利用することができるとの見込みを示す。「ウェストラファイエットにおける最大の太陽放射照度は、ハイチのポルトープランス、そしてケニアのエルドレトやモンバサといった都市で観測される最小照度とほぼ同水準です。ウェストラファイエットで成功したこの実験は、もし赤道付近の都市で行ったなら、少なくともここと同じ程度にはうまく機能するでしょうし、あるいはもっと高い効果が出る可能性も多分にあります」
課題はスケールアップ
2人の研究者は現在、このシステムのスケールアップ方法を検討している。現在このプロトタイプの水の生産速度は10~20ml/分である。「今回のプロトタイプは比較的短い時間とリソースを使用して実験を行うことができるように意図的に小さなスケールで製作しています。私たちはスケールアップの方策についてアイディアを持っていますし、またその実証計画も立てています」とBlatchley教授は語った。
今回発表された技術については、「パデュー大学 技術商用化オフィス(Purdue Office of Technology Commercialization)」はすでに国際特許出願を行っている。