世界銀行、増大するエネルギー需要に対応するための水イニシアティブを発表

世界銀行が、世界の国々および経済界はエネルギー需要が増加するに伴って水供給に対する増大する需要に取り組まなければならないとして、水・エネルギー分野への投資を連携させることを目的とした「Thirsty Energy Initiative」を開始した。
「Thirsty Energy Initiative」は、世界銀行の「世界水パートナーシッププログラム」および「エネルギーセクター管理評価プログラム」のサポートを受けて作成されたものである。

水とエネルギーに統合的に取り組むことが必要

このイニシアティブは、2014年1月21日にアブダビで開催された世界未来エネルギーサミット(WFES:World Future Energy Summit)において発表された。発表によれば、その目指す到達点は、エネルギー開発計画と水の使用がもつシナジー効果を明らかにするとともにトレードオフを定量化し、エネルギーと水に対する投資のための分野横断的な計画策定に指針を提供し、さらに各国政府が水・エネルギーに関する統合的な計画策定のために利用できる意思決定ツールを開発することだという。

世界銀行グループのRachel Kyte 副会長(兼気候変動特使)は声明の中で次のように述べた。「我々は水なしでは貧困層のエネルギーへのアクセスを向上させる、エネルギー効率を向上させる、再生可能エネルギーの利用を拡大するという世界的な目標を達成し得ません。水とエネルギーの相互関係は災害に強く、効率的でクリーンなエネルギーシステムを構築する上で極めて重要なのです」

人口増加が水不足を加速、水不足が電力供給の減少をもたらす

世界銀行は発表の中で、水とエネルギーの間にはすでにボトルネックとなる問題が出現しており、これは我々に改善が必要であることを示唆するものだとして、「昨年だけで水の不足によりインドの火力発電所が閉鎖し、米国の発電所が発電量を減らし、スリランカ、中国、ブラジルなど多くの国々での水力発電容量が脅かされた」と述べている。世界銀行は、世界の人口が90億人に近づくに伴い水の需要は15%向上し、その分農業用水が減少すると指摘している。これは国際エネルギー機関(IEA)の2035年までにエネルギー需要が35%増加し、これに関連して水の使用は15%増加するとの予測を引用したものである。この使用には一時的に河川・湖沼から引いて冷却のために使用し、また水源に放出する水の量が含まれている。しかし、エネルギー生産のために必要となる水の中には、エネルギー生産過程で汚染され、再利用できなくなるものもある。これを世界銀行では水の「消費」と表現しており、エネルギー生産のために消費される水の量は2035年までに85%増加すると予測している。

気候変動が水・エネルギー不足を加速

世界銀行はまた、気候変動が水・エネルギーの結びつき影響をもたらしていると指摘する。これは気候変動により、ますます多くの水の欠乏が発生し、これが発電プラントの減少をもたらし、結果としてさらなる電力不足がもたらされるという現象を指すものである。さらに、河川および湖沼の水が温暖化し、発電所での冷却がより困難になっていくとも指摘した。