中国、「土壌環境保護および総合対策行動計画」の策定を進める――土壌浄化市場は数十億元規模に発展する見込み

中国環境保護部(MEP)生態司の司長である庄国泰氏は、2013年12月8日に開催された「2013年中国環境保護上場企業サミット」にて、国内の土壌汚染浄化市場は将来的に数十億元規模への成長が見込まれると語った。中国国内では、大気汚染および水質汚染については既に40年前から対策が進められているものの、土壌汚染の浄化については何も進められていない。
同氏によると、MEPは関連部門と共同で「土壌環境保護および総合対策行動計画」(以下、「行動計画」)の策定を進めており、2013年12月3日の環境保護部常務会議において「行動計画」の審議稿を討論したという。

また同サミットで、MEP科技標準司の司長である熊躍輝氏は「MEP、国家発展改革委員会および国家統計局によって間もなく完成される『全国第4回環境保護産業調査』の結果から、土壌汚染処理に関する生態修復企業は、環境産業全体のうちわずかに3.7%しか占めていないことが分かった。このため、将来的に非常に大きな発展の余地がある」と、土壌浄化業界の展望を述べた。

「行動計画」の5つの主要項目

2013年1月23日に国務院弁公庁により公布された「直近期土壌環境保全と総合対策業務の手配に関する通達」(以下「通達」)は、土壌汚染環境保護および総合対策分野の「十二五」計画である。現在検討中の「行動計画」はその方針に沿ったものであるが、2017年までの計画を定めており、対象とする期間が長く且つ新しい措置についても規定しているため、土壌環境保護に対する国家の要求を更に遂行するものとなっている。
具体的に、「行動計画」は以下の5つの主要項目から成る。

  1. 農業用地と飲用水源地の土壌保護
  2. 土壌汚染源の抑制
  3. 汚染された土地のリスク管理・抑制
  4. 修復モデルケース
  5. 測定システム構築の強化

このうち、「2. 土壌汚染源の抑制」は極めて重要である。大気中および水中の重金属や汚染物質は最終的に土壌中に戻るため、土壌汚染源を抑制するためには大気および水資源への対策作業が重要となるためである。

土壌汚染の現状と関連規制体系の構築に向けた取り組み

「十一五」期間中にMEPは土壌汚染調査を実施した。その結果、「七五」期間と比べると、排出量の増加率は重金属の種類によって異なることが判明した。特にクロムの排出量はかなり増加したため、注意しなければならない。

習近平政権は国内の深刻な環境汚染問題を解決するために、3つの環境保護行動計画を制定することを決定した。そのうち、「大気汚染防止対策行動計画」は2013年9月に既に公布されているが、「水汚染防止対策行動計画」と今回の「土壌環境保護および総合対策行動計画」はまだ策定途中である。

土壌汚染源は大気中および水中の汚染沈積物が蓄積したものであるため、大気汚染および水質汚染よりも更に複雑な問題である。しかしながら、中国において大気汚染および水質汚染に関する対策はいまだ難しい課題であり、これから実施されるまたは現在実施中の段階であるため、土壌汚染対策にはかなり長い時間が掛かるものと見られている。

中国科学院科技政策および管理科学研究所の副所長である王毅氏は次のように語っている。「土壌環境保護問題は複雑であり且つ多くの利害関係者が関わっているため、『行動計画』の策定に当たってはその合理性を高めるために、関連部門のみが策定に携わるのではなく、『大気汚染防止対策行動計画』よりも更に多くの利害関係者に参加してもらうべきである」

「土壌環境保護法」制定に向けた課題

同サミットで、MEPの庄氏は現状の問題を分析したうえで、「土壌環境保護法」の制定に向けて次の3つの課題を挙げている。

  1. 資金源の問題
    企業が土地を転売する際には事前に汚染を浄化する必要があるが、最初に国から土地を取得したときに既に汚染されていたにも関わらず高い価格で買い取ったために(本来は安い価格のはずが)、その浄化費用を賄うことが難しい。
  2. 汚染企業に対する責任の明確化の問題
    土壌汚染は汚染物質が長期的に蓄積した結果であるため、汚染企業の責任を明確にするのが難しい。
  3. 農業用地処理に関する農民の生計の問題
    中国において深刻な土壌汚染が起こった地域は南部、特に南西地域である。それらの地域では一人当たりの農業用地は少ないため、土壌汚染を処理する際、対策目標を実現させると共に農民が経済的な利益を得ることは困難である。

以上の問題を解決するためにも、土壌環境保護に関する法体系を構築しなければならない。現在、中国全人大常務委員会は「土壌汚染防治法」の策定に取り組んでいる。
庄氏によると、「土壌汚染防治法」の立法準備作業は2年前から始まっており、条文は
既に起草されているという。いまのところ立法の方針については、「土壌汚染防治法」を制定すべきであるという意見と、「土壌環境保護法」を制定すべきであるという意見が存在する。仮に、環境保護に1元(約17円)投入すれば済むのであれば、リスク管理および対策にはそれぞれ10元(約170円)と100元(約1700円)が必要となる。このため、高額な対策コストを避けるためにも、「水汚染防治法」の教訓を踏まえて「土壌環境保護法」を制定すべきである。中国の監督管理能力を顧みた場合、土壌汚染については、汚染後の対策ではなく、事前に保護措置を講じる施策の方が良いだろう。