ブラジルの上下水事情改善を目指す民間団体 Trata Brasilとコンサルティングファームの GO Associadosが2月にリリースした報告書「サンパウロ州の下水処理網拡張による経済的・社会的メリット(BENEFÍCIOS ECONÔMICOS E SOCIAIS DA EXPANSÃO DO SANEAMENTO NO ESTADO SÃO PAULO)」によると、2020年までにサンパウロ州の上下水サービス網を拡張し、飲料水供給率99%、下水収集率95%、下水処理率を90%とする為には、350億レアル(約1兆5050億)の投資が必要とされている。このうち42%は浄水設備向け、58%は下水収集設備向けとなる。
報告書によれば、現在のサンパウロの飲料水普及率は95.7%、下水収集率は83.27%、下水処理率は62.5%で、ブラジルでは最も高い。リオデジャネイロの飲料水普及率は88.2%、ブラジル全体では82.4%だが、ブラジル全体の下水収集率は2011年のデータでは48.1%で、下水の処理率は37.5%に過ぎず、現状南米一の経済力を誇り、サッカーワールドカップとオリンピックという世界の二大イベントを控えたブラジルの現状は、理想とは程遠い点が指摘されている。
水処理に関する情報不足も問題であり、都市省の下水処理に関する最新データは、対2010年比の2011年のものである。国家水資源局の2011年の情報によると、ブラジルで水インフラに投資する必要がある都市は84%に達し、16%の市町村では水資源が不足している。アマゾン地域では水資源が豊富だが、人口が集中している東南地域の淡水資源は、ブラジル全体の6%にすぎない。サンパウロ地域では、同地域に存在する水資源の4倍の水が使用される為、遠くから水資源を供給する必要がある。またサンパウロでは、浄水場まわりでの漏水、および、上水管への違法接続による盗水を含め、供給している飲料水の約30%が無収水となっている。
本報告書では、2020年までに350億レアル投資することによる経済的・社会的効果として、以下が挙げられている。
- 雇用創設:
インフラ敷設工事などにより年間9万3000人の直接・間接雇用が創設されると見積もられる。 - 公共衛生の改善:
低所得層に多い下痢やA型肝炎の疾患が4万6000件減少することで、そのための医療費が年間870万レアル(約3億7410万円)節約される。また労働者の疾患による休職日数が減って労働生産性が向上することで、2億900万レアル(約89億8700万円)の経済効果が見込まれる。 - 不動産評価:
不動産評価が、飲料水供給設備を有することで平均0.04%、下水道敷設で0.77%高まり、これによる経済効果は年間7億5600万レアル(約325億800万円)と見積もられる。
「サンパウロ州の下水処理網拡張の経済的・社会的メリット」は、以下のサイトからダウンロード可能(ポルトガル語表記)。
http://www.tratabrasil.org.br/datafiles/uploads/estudos/beneficios/Estudo-Completo-GO.pdf